第I章 演習問題 [6]

まず順序数 \(\beta_0\) と \(\beta_1\) について, \(\beta_0>\beta_1\) ならば \(\omega^{\beta_0}>\omega^{\beta_1}\) であることを確認しなさい. これにより, つねに \(\alpha\leq\omega^\alpha<\omega^{\alpha+1}\) となるから, \(\alpha<\omega^\xi\) となるような順序数 \(\xi\) は実際に存在する. そして, その最小のものは \(\alpha+1\) 以下の後続型順序数である. そのような最小の \(\xi\) について \(\xi=\beta_0+1\) とすれば, \(\beta_0\) は \(\alpha\) 以下の順序数で \(\omega^{\beta_0}\leq \alpha<\omega^{\beta_0+1}\) となる. つまり, \(\omega^{\beta_0}\leq\alpha<\omega^{\beta_0}\cdot\omega\) である. そこで, \(\alpha<\omega^{\beta_0}\cdot\xi\) をみたす最小の順序数 \(\xi\) は2以上の自然数であり, \(\xi=\ell_0+1\), \((1\leq\ell_0<\omega)\) と表される. このとき, \(\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0\leq\alpha<\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\omega^{\beta_0}\) であるから, \(\alpha_1<\omega^{\beta_0}\) をみたす順序数 \(\alpha_1\) について \[ \alpha=\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\alpha_1, \qquad(1\leq\ell_0<\omega,\quad 0\leq\alpha_1<\omega^{\beta_0}) \] となる. そのような \(\alpha_1\) がただ一つ存在する. もしも \(\alpha_1>0\) であれば, この \(\alpha_1\) を \(\alpha\) の代わりに用いて同様に議論すれば, 順序数 \(\beta_1\), \(\ell_1\), \(\alpha_2\) を \[ \alpha_1=\omega^{\beta_1}\cdot\ell_1+\alpha_2, \qquad(1\leq\ell_1<\omega,\quad 0\leq\alpha_2<\omega^{\beta_1}) \] となるようにとれる. ここで \(\omega^{\beta_1}\leq \alpha_1<\omega^{\beta_0}\) より \(\beta_1<\beta_0\) であり, また \(\alpha_2<\omega^{\beta_1}\) より \(\alpha_2<\alpha_1\) である. 以下, \(\alpha_{n}>0\) であるかぎり同様の手順で \[ \alpha_n=\omega^{\beta_n}\cdot\ell_n+\alpha_{n+1}, \qquad(1\leq\ell_n<\omega,\quad 0\leq\alpha_{n+1}<\omega^{\beta_n}) \] となるような \(\beta_n\), \(\ell_n\), \(\alpha_{n+1}\) が見つかるが, 順序数の無限降下列はありえないから, ある番号 \(n\) のところで \(\alpha_{n+1}=0\) となるはずだ. このとき \[ \begin{align} \alpha=&\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\alpha_1 \\ =&\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\omega^{\beta_1}\cdot\ell_1+\alpha_2 \\ \vdots & \\ =&\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\omega^{\beta_1}\cdot\ell_1+ \cdots+\omega^{\beta_n}\cdot\ell_n \end{align} \] となっている. また, この構成手順から, \[ \alpha\geq\beta_0>\beta_1>\cdots>\beta_n \] となることもわかる. 以上によって標準形の存在は示された.

つぎに, このような表示が一意的であることを超限帰納法によって示す. いま \(\alpha\) 未満の順序数についてはすでに標準形の一意性が確認されているものと仮定する. 条件 \[ \alpha=\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\alpha_1, \qquad(1\leq\ell_0<\omega,\quad 0\leq\alpha_1<\omega^{\beta_0}) \] をみたす順序数 \(\beta_0\) は \[ \omega^{\beta_0}\leq\alpha<\omega^{\beta_0+1} \] という条件によってただ一つに決まる. つぎに, \(\ell_0\) は, \[ \omega^{\beta_0}\cdot\ell_0\leq\alpha<\omega^{\beta_0}\cdot(\ell_0+1) \] という条件によってただ一つに決まる. このとき, 条件 \[ \alpha=\omega^{\beta_0}\cdot\ell_0+\alpha_1, \qquad \quad 0\leq\alpha_1<\omega^{\beta_0} \] という条件をみたす \(\alpha_1\) がただ一つ決まる. この \(\alpha_1\) はすでに見たとおり \(\alpha\) より小さいから, 帰納法の仮定により, その標準形は一意的に定まる. 以上のことから, \(\alpha\) の標準形もただ一とおりに定まることがわかる.

あとはイプシロン数について. まず \(\kappa\) が後続型基数 \(\delta^+\) である場合を考える. この場合は \(\alpha<\kappa\) のとき \(\omega^\alpha<\kappa\) となることが \(\alpha\) にかんする超限帰納法で簡単にわかる. そこで, \(\kappa\) 未満の任意の順序数 \(\alpha\) について \(\alpha_0=\alpha\), \(\alpha_{n+1}=\omega^{\alpha_n}\) によって列 \(\alpha_n\) を定め, \(\varepsilon=\sup_{n}\alpha_n\) とおけば, これが \(\alpha\) より大きく \(\kappa\) 未満のイプシロン数であることがわかる. いま \(\kappa\) は後続型基数で正則だから, \(\kappa\) 未満に非有界に存在するイプシロン数は \(\kappa\) 個ある. これで後続型基数の場合が証明できた. このことから \(\kappa\) が極限基数の場合に同じ命題が導かれることは明らかであろう.

最後に, 順序数の冪の定義 (→定義9.5) の極限順序数の場合を見れば, イプシロン数の任意の集合の上限がまたイプシロン数であることがわかる. したがって, 任意の不可算基数 \(\kappa\) は, \(\kappa\) 個のイプシロン数の上限として, それ自体イプシロン数である.

標準形の底は \(\omega\) である必要はありません. 2以上の順序数ならどれでも同じように議論でき, 任意の順序数 \(\gamma\geq2\) について順序数の «\(\gamma\)-進表示»を求めることができます. しかしながら, 応用上は \(\omega\)-進表示がとくに重要で, とくにこの場合を「カントール標準形」と呼んでいます.

イプシロン数とは, \(\alpha<\epsilon\) ならば \(\omega^\alpha<\epsilon\) である, という条件をみたす無限順序数 \(\epsilon\) のことにほかなりませんので, イプシロン数の集合が上限のもとで閉じていることは, \(f:\kappa\to\kappa\) を任意の関数とするとき, \(f\) のもとで閉じた順序数は \(\kappa\) の下でc.u.b.集合 (→第II章定義6.6) をなすという, より一般の原理に還元されます.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年5月26日)

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