第III章 演習問題 [13]

関係 \(\mathbf{R}\) の定義 \[ x\mathbf{R}y \;\leftrightarrow\; x\in \mathrm{tr\,cl}(y) \] により, \(\mathrm{pred}(x,\mathbf{WF},\mathbf{R})=\mathrm{tr\,cl}(x)\) なので \(\mathbf{R}\) は集合状である. \(x\mathbf{R}y\) のとき \(\mathrm{rank}(x)<\mathrm{rank}(y)\) なので, \(\mathbf{WF}\) の空でない部分集合 \(S\) から最小階数の要素を選べば, それが \(\mathbf{R}\)-極小要素ということになる. したがって \(\mathbf{R}\) は整礎的関係である.

すべての整礎集合 \(x\) について \(\mathbf{G}(x)=\mathrm{rank}(x)\) となることを, 整礎的関係 \(\mathbf{R}\) にかんする超限帰納法によって証明する. 帰納法の仮定として \[ \forall y\big(\,y\mathbf{R}x\;\rightarrow\;\mathbf{G}(y)=\mathrm{rank}(y)\,\big) \tag{1} \] となっているものとする. \(\mathbf{R}\) は関係として推移的 \((a\mathbf{R}b\land b\mathbf{R}c\rightarrow a\mathbf{R}c)\) であるから, \(x\) のモストフスキ収縮像 \[ \mathbf{G}(x) = \big\{\,\mathbf{G}(y)\,:\, y\mathbf{R}x\,\big\} \] は推移的集合である. 仮定(1)から \[ \mathbf{G}(x) = \big\{\,\mathrm{rank}(y)\,:\,y\mathbf{R}x\,\big\} \tag{2} \] となるから, 順序数の推移的集合として, \(\mathbf{G}(x)\) はそれ自身ひとつの順序数である(→第I章補題7.5). \(y\mathbf{R}x\) のとき \(\mathrm{rank}(y)<\mathrm{rank}(x)\) なので, 式(2)から不等式 \(\mathbf{G}(x)\leq \mathrm{rank}(x)\) が導かれる. いっぽう, \(\beta<\mathrm{rank}(x)\) とすると, 本章の補題2.6(b)からある \(y\) について \(y\in x\) かつ \(\beta<\mathrm{rank}(y)+1\) となっている. このとき, 仮定(1)によって \[ \beta \leq \mathrm{rank}(y) = \mathbf{G}(y) < \mathbf{G}(x) \] となる. ここで \(\beta\) は \(\mathrm{rank}(x)\) 未満の任意の要素でよかったから, \(\mathrm{rank}(x)\leq \mathbf{G}(x)\) となり, 等式 \(\mathbf{G}(x)=\mathrm{rank}(x)\) が得られる.

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月10日)

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