第III章 演習問題 [18]

基礎の公理は \[ \forall A\big(\,A\neq 0\;\rightarrow\; \exists x(\,x\in A\land \forall y\in A(x\notin A)\,)\,\big) \tag{AF} \]という単一の式だった. 式 \(x\notin A\) を \(\phi\) と書くなら, 式(AF)は \[ \forall A\Big[\;\exists x(\neg\phi(x))\;\rightarrow\; \exists x\big(\,\forall y\in x\,\phi(y)\land \neg\phi(x)\,\big) \;\Big] \]である. 対偶をとれば \[ \forall A\Big[\;\forall x\big(\,\forall y\in x\,\phi(y)\rightarrow\phi(x)\,\big) \;\rightarrow\;\forall x\,\phi(x)\;\Big] \]となるから, 式(AF)は式 \(x\notin A\) に関する \(\mathrm{AF}^*\) を \(\forall A\) によって量化したものにほかならない. したがって, \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}+\mathrm{AF}^*\) から基礎の公理が導かれる.

逆に, \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}\) に基礎の公理を追加した \(\mathrm{ZF}-\mathrm{P}\) から, 公理図式 \(\mathrm{AF}^*\) の個々の実例が証明できることを示そう. 式 \(\phi\) について \[ \forall x\big(\,\forall y\in x\,\phi(y)\,\rightarrow\,\phi(x)\,\big)\tag{1} \]を仮定する. いま \(\neg\phi(x)\) とすると仮定(1)から \(x\neq 0\) かつ \(\exists y\in x\,\neg\phi(y)\) である. そこで, \[ A = \big\{\,y\in\mathrm{tr\,cl}(x)\,:\,\neg\phi(x)\,\big\} \] とおくと \(A\neq0\) である. 基礎の公理によれば, このとき \[ y\in A\land y\cap A\neq 0 \] をみたす \(y\) が存在する. \(z\in y\) のとき \(z\notin A\) より, \(z\notin \mathrm{tr\,cl}(x)\) または \(\phi(z)\) であるが, \(z\in y\in \mathrm{tr\,cl}(x)\) である以上 \(z\in \mathrm{tr\,cl}(x)\) のはずだから \(\phi(z)\) である. \(y\) の任意の要素 \(z\) について \(\phi(z)\) なので, 仮定(1)により \(\phi(y)\) となるが, これは \(y\in A\) という仮定と矛盾する. 仮定(1)と \(\neg\phi(x)\) から矛盾に導かれるということは, とりもなおさず 仮定(1)から \(\forall x\phi(x)\) が導かれるということであるから, \(\phi\) に関する \(\mathrm{AF}^*\) が示されたことになる.

ここで \(\mathrm{AF}\) から \(\mathrm{AF}^*\) を導くために推移閉包を用いたことに注意してください. そのため, 無限公理を除いた \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}-\mathrm{Inf}\) においては \(\mathrm{AF}\) から \(\mathrm{AF}^*\) を導くことはできなくなります. 第IV章の演習問題[29]においてこのトピックが扱われます.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月10日)
2011年7月7日更新: コメントを追加

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