第III章 演習問題 [5]

訳本の問題文の式 \(mEn\) は \(nEm\) の間違いでした. 訳者のミスです. すみません.

まず, \(E\) が外延的で整礎的であることをいう. 自然数 \(m_0\) と \(m_1\) について \[ \forall n\big(\,nEm_0\,\leftrightarrow\,nEm_1\,\big) \] が成立しているなら, \(m_0\) と \(m_1\) の二進数展開が一致するから \(m_0=m_1\) である. これは関係 \(E\) が外延的であることを意味する. 次に, \(nEm\) のときは \(2^n\leq m\) であることから \(n < m\) となることに注意しよう. このことから, どの \(m\) についても \(\{\,n\,:\,nEm\,\}\) は有限集合であることがわかる. また, \(\omega\) の空でない部分集合 \(S\) が与えられたとき, 通常の大小関係の意味で \(S\) の最小要素をとれば, それが \(E\) の意味で \(S\) の極小要素であることもわかる. こうして, \(E\) は集合 \(\omega\) において整礎的である.

モストフスキの収縮定理(→定理5.14)により, 関係 \(E\) にかんして再帰的に定義された関数(→定理5.6) \[ G(m)=\big\{\,G(n)\,:\,nEm\,\big\}\qquad(m\in \omega) \] は, \(\langle \omega,{E}\rangle\) と \(\langle G{“}\omega,{\in}\rangle\) の間の同型写像である. そこで, あとは \(G\) が \(R(\omega)\) の上への写像であることを示せばよい.

いま, \(nEm\) となるすべての \(n\) について \(\mathrm{rank}(G(n))\leq n\) であったと仮定すれば, \[ \mathrm{rank}(G(m))=\sup\{\,\mathrm{rank}(G(n))+1\,:\,nEm\,\}\leq \max\{\,n+1\,:\,nEm\,\}\leq m \] となる. よって帰納法によりすべての \(m\) で \(\mathrm{rank}(G(m))\leq m<\omega\) であり, \(G{“}\omega\subset R(\omega)\) である.

今度は \(x\in R(\omega)\) で, \(x\) のどの要素も \(G\) の値域に属すると仮定する. つまり \(x\subset G{“}\omega\) だったと仮定する. このとき, \(x\) が有限集合であることから, \[ x = \{\,G(n_0),G(n_1),\ldots,G(n_{k-1})\,\},\quad n_0 < n_1 < \cdots < n_{k-1} < \omega \] となるように \(n_0\),\(n_1\),…,\(n_{k-1}\) をとることができる. そこで \(m=2^{n_0}+2^{n_1}+\cdots+2^{n_{k-1}}\) とおけば \(G(m)=x\) となり \(x\) もまた \(G\) の値域に属する. このことから, \(R(\omega)\) 上の整礎的関係 \(\in\) にかんする帰納法により, \(R(\omega)\subset G{“}\omega\) となる.

こうして \(\langle R(\omega),{\in}\rangle\) の構造は自然数全体の集合の上で余すところなく表現できることになります. より大きな構造, たとえば \(\langle H(\omega_1),{\in}\rangle\) を, 実数の集合などの手段で表現することは, 記述集合論の大事なテーマのひとつです.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月2日)

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