第IV章 演習問題 [10]

第一段 まず式 \(\phi_0(\alpha,\beta)\) を, \(\alpha\) も \(\beta\) も順序数であって, \(\alpha\) から \(\beta\) への全射は存在しない, と主張する式だとする: \[ \phi_0(\alpha,\beta)\;\leftrightarrow\; \alpha,\beta\in\mathbf{ON}\land \forall f\big(\;(f:\alpha\to\beta)\,\rightarrow\, f{“}\alpha\neq \beta\;\big). \]そこで, \(\phi_0(\alpha,\beta)\) は \(\alpha<|\beta|\) を含意する. つぎに, 式 \(\phi_1(\alpha)\) を \[ \exists g\big[\;g:\,\alpha\to\mathbf{ON}\setminus\omega\land\forall\xi<\alpha\forall \eta<\xi\,\phi_0(g(\eta),g(\xi))\;\big] \] と定める. すなわち, \(\phi_1(\alpha)\) は長さ \(\alpha\) の無限基数の上昇列の存在を主張し, ひいては \(\langle\,\omega_\xi\,:\,\xi<\alpha\,\rangle\) の存在を含意する. そして, 文 \(\phi\) を \(\forall \alpha\,\phi_1(\alpha)\) とする. 結果として \(\phi\) はすべての順序数 \(\alpha\) に対して \(\omega_\alpha\) が存在することを主張する文となる.

いま, \(R(\beta)\) に対してこの文 \(\phi\) が絶対的だったとする. \(\phi\) は \(\mathrm{ZF}\) の定理であるから, 絶対性は \(\phi^{R(\beta)}\) を含意する. \(R(\beta)\) に対して順序数や基数のクラスは絶対的であるから, \(\phi^{R(\beta)}\) が存在を主張する \(R(\beta)\) における基数 \(\omega_\alpha^{R(\beta)}\) は本物の \(\omega_\alpha\) である. そこで, \(\beta\) は \(\forall\alpha<\beta(\,\omega_\alpha<\beta\,)\) をみたし, したがって \(\beta=\omega_\beta\) となる.

第二段 \(\mathbf{ON}\cap x\) が順序数であり \(x=R(\mathbf{ON}\cap x)\) であると主張する式を \(\psi_0(x)\) としよう. また, 対の公理, 和集合の公理, 冪集合の公理と, あと \(R(\alpha)\) の階層を定義するのに必要なだけの有限個の内包性公理や置換公理との連言を \(\psi_1\) としよう. \(\psi_1\) は \(\mathrm{ZF}\) の定理である. \(\psi_1\) は \(\forall y\exists x(\,\psi_0(x)\land y\in x\,)\) すなわち \(\mathbf{V}=\mathbf{WF}\) を含意する. しかし, 文 \(\psi_1\) は冪集合演算が絶対的であることを保証してくれるわけではないので, \(\psi_1\) の推移的モデル \(M\) に対して保証されるのは \(\forall \alpha\in\mathbf{ON}\cap M(\,R(\alpha)\cap M\in M)\) ということにすぎない. ところが, さらに \(\psi_0(x)\) も \(M\) に対して絶対的であるとすれば, この \(R(\alpha)\cap M\) について \(\psi_0(R(\alpha)\cap M)^M\) であることから \(\psi_0(R(\alpha)\cap M)\) であり, したがって \(R(\alpha)\cap M\) がホンモノの \(R(\alpha)\) になることが保証される.

そこで, \(\phi\land \psi_0(x)\land\psi_1\) を \(\psi(x)\) としよう. この \(\phi\) は第一段で定義したものだ. もしも推移的集合 \(M\) に対して式 \(\psi(x)\) が絶対的であるならば, \((\mathbf{V}=\mathbf{WF})^M\) であり \(\forall\alpha\in\mathbf{ON}\cap M(\,R(\alpha)\in M\,)\) であるから, \(M=R(\mathbf{ON}\cap M)\) となる. そこで \(\beta=\mathbf{ON}\cap M\) とおくと \(M=R(\beta)\) であり, 第一段の結果により \(\beta=\omega_\beta\) となる.

第一段の \(\phi\) はここで定義したとおりの \(\mathrm{ZF}\) の定理でなくても, それを証明するのに十分なだけの公理の連言でもよいわけです. こうした目的に \(\mathrm{ZF}\) の定理を用いることと, その定理を証明するのに十分なだけの \(\mathrm{ZF}\) の有限個の公理の連言を用いるのとは, 実質的に同じことです. 裏を返せば, 第二段の文 \(\psi_1\) としては, 冪集合の公理を含めるかわりに \(\forall \alpha\exists y\forall x(\,\mathrm{rank}(x)<\alpha\rightarrow x\in y\,)\) という \(\mathbf{ZF}\) の定理を考えたほうがわかりやすい, と言えるかもしれません. もちろん, そうしてみたところで, 階数を(再帰的に)定義するのに必要なだけの公理との連言をとってやる必要は依然としてあるわけで, 意図がわかりやすくなるという他には, 冪集合の公理の代わりに上記の定理を採用する特段のメリットもありません.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月19日)

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