第IV章 演習問題 [2]

(a)まず, \(\kappa\) は極限順序数であり, \(\mathrm{rank}(x)<\kappa\) であれば \(\mathrm{rank}(\mathcal{P}(x))=\mathrm{rank}(x)+1<\kappa\) であるから, \[ \forall x\big[\,x\in R(\kappa)\,\rightarrow\,\mathcal{P}(x)\in R(\kappa)\,\big] \] となる. いっぽう, 包含関係 \(\subset\) が任意の推移的クラスに対して絶対的であること(→定理3.9)から, \(R(\kappa)\) において計算された集合 \(x\) の冪集合 \((\mathcal{P}(x))^{R(\kappa)}\) については \[ y\in (\mathcal{P}(x))^{R(\kappa)}\;\leftrightarrow\;y\in R(\kappa)\land y\subset x \] となっている. ところが \(x\in R(\kappa)\) であるかぎり, \(y\subset x\) なら \(\mathrm{rank}(y)\leq\mathrm{rank}(x)<\kappa\) したがって \(y\in R(\kappa)\) となるから, すべての \(y\) について \[ y\subset x\;\leftrightarrow\;y\in R(\kappa)\land y\subset x \] である. このことから \((\mathcal{P}(x))^{R(\kappa)}=\mathcal{P}(x)\) が得られ, \(\mathcal{P}(x)\) が \(R(\kappa)\) に対して絶対的とわかる.

(b)と(c) 順序数 \(\alpha\) に関する超限帰納法によって \(\omega_\alpha\leq\beth_\alpha\) がわかる. また, \(\kappa\) が不可算で正則な強極限基数であることにより, \(\kappa\) 未満の順序数 \(\alpha\) に関する超限帰納法で \[ \forall \alpha < \kappa\big[\;\beth_\alpha < \kappa\;\big] \]がわかる. したがって, \(\omega_\alpha\) も \(\beth_\alpha\) も \(R(\kappa)\) の要素になっている. (a)により \(\mathcal{P}(x)\) が \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることはわかったから, あとは, 集合の濃度を測る演算 \(|x|\) が \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることを示せば, \(\omega_\alpha\) も \(\beth_\alpha\) も \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることがわかる.

まず \(x\in R(\kappa)\) のとき \(x\subset R(\mathrm{rank}(x))\) より \(|x|\leq|R(\mathrm{rank}(x))|\leq\beth_{\mathrm{rank}(x)}<\kappa\) となることに注意しよう. 式 \(|x|=\alpha\) は, 順序数 \(\alpha\) と \(x\) のあいだに全単射がある, という主張と, \(\alpha\) より小さい順序数と \(x\) の間には全単射がない, という主張の連言になっている. どちらも, \(\alpha\) 以下の順序数から \(x\) への関数の話であるから, \(\alpha\times x\) の部分集合のうちに特定の条件をみたすものがあるかないかを問題にしている. ところがその特定の条件というのは「それが関数であって定義域はこれこれの順序数, 値域は \(x\) で, しかも単射である」という条件であるから, 定理3.11によって \(R(\kappa)\) に対して絶対的である. そこで, もしも \(|x|\) と \(|x|^{R(\kappa)}\) が一致しないとすれば, その原因は関数を探す範囲が一致しないことのはずだ. ところが, \[ \mathrm{rank}(\alpha\times x)\leq\max\{\mathrm{rank}(\alpha),\mathrm{rank}(x)\}+2 <\kappa \]であるから, \(\alpha\times x\in R(\kappa)\) であり, また(a)により \(\mathcal{P}(\alpha\times x)\) は \(R(\kappa)\) に対して絶対的であるから, 式 \(|x|=\alpha\) の成否を証拠だてする関数を探す範囲はもともと \(R(\kappa)\) 内に限られている. 以上のことから, 式 \(|x|=\alpha\) は \(R(\kappa)\) に対して絶対的である.

(d) これは(a)を用いて \(\alpha\) に関する超限帰納法で証明すればよい.

(e) 関数 \(f:\beta\to\alpha\) が \(\beta\) を \(\alpha\) の中へ共終に写す(→第I章定義10.29)という式は絶対的である. これは本文の定理3.11の証明のあとで言及されている, 絶対性を確認したほうがいいと思われる数限りない概念のひとつである. これは第3節の方法で絶対的とわかる. これには \(\kappa\) が強到達不能基数であることも考えているクラスが \(R(\kappa)\) であることも必要ない. いっぽう, \(\mathrm{cf}(\alpha)\) を計算しようとすれば, \(\beta\) を \(\alpha\) の中へ共終に写す関数が存在するような順序数のうち最小のものを求めなければならず, ここではどうしても, \(\beta\) から \(\alpha\) へのすべての関数を相手にする必要がある. 考えているクラスが \(R(\kappa)\) であることが効いてくるのはここで, 上で(b)と(c)の絶対性を示した議論のとおり, そうした関数の範囲はもともと \(R(\kappa)\) 内に限られているのであるから, \(R(\kappa)\) において \(\beta\) を \(\alpha\) の中へ共終に写せないのであれば本当に (真の宇宙 \(\mathbf{V}\) においても) \(\beta\) を \(\alpha\) の中へ共終に写せない. このことから, \(\mathrm{cf}(\alpha)\) が \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることがわかる.

(f) すでに(c)と(e)により \(\beth_\alpha\) と \(\mathrm{cf}(\alpha)\) が \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることを知っているので, \[ \alpha=\beth_\alpha\land \alpha = \mathrm{cf}(\alpha) \] も \(R(\kappa)\) に対して絶対的であることはすぐにわかる. この式は \(\alpha\) が強到達不能基数であることを意味する.

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月13日)
2011年6月14日更新: 文章の不正確・不明瞭なところを直した

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