第IV章 演習問題 [20]

以下, \(\beta\) を, \(\beta=\beth_\beta\) をみたす十分大きな基数とすると, \(R(\beta)\) は \(\mathrm{ZFC}\) の十分大きな有限部分のモデルとなる. また, \(|R(\beta)|=\beta=\beth_\beta\) となる.

演習問題[18]と[19]の要領で, 全単射 \(\mathbf{F}:\mathbf{V}\to\mathbf{V}\) を \[ \mathbf{F}(x)=\begin{cases} 1, & \text{if } x=0,\\ 0, & \text{if } x=1,\\ x, & \text{if } x\notin\{0,1\} \end{cases} \]によって定め, さらに二項関係 \(\mathbf{E}\subset\mathbf{V}\times\mathbf{V}\) を \(x\mathrel{\mathbf{E}}y\,\leftrightarrow\,x\in\mathbf{F}(y)\) によって定めれば, \(\mathbf{V},\mathbf{E}\) は \(\mathrm{ZFC}^-\) をみたし, また \(\langle R(\beta),\mathbf{E}\rangle\) は \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の十分大きい有限部分のモデルとなり, しかも \[ \Big(\;\exists x\big(\,x=\{x\}\,\big)\;\Big)^{R(\beta),\mathbf{E}} \]となっている. 以下, このモデル \(\langle R(\beta),\mathbf{E}\rangle\) のことを \(U\) と表記することにする. また \((\Omega=\{\Omega\})^{\mathbf{V},\mathbf{E}}\) をみたす要素 \(\Omega\) を(もともとひとつしかないが)ひとつ固定する. 対応 \(x\mapsto \langle \Omega,x\rangle\) は \(\mathbf{WF}^U\) 上で単射であり, その像 \(\Omega\times\mathbf{WF}^U\) は \(\mathbf{WF}^U\) と交わりをもたない: \((\Omega\times\mathbf{WF}^U)\cap\mathbf{WF}^U=0\).

以後, 上のように構成されたモデル \(\mathbf{V},\mathbf{E}\) の中で議論する. つまり, あたかも本物の \(\mathbf{V},{\in}\) が \(\mathrm{ZFC}^{-}+(\Omega=\{\Omega\})\) をみたすかのように仮定して議論する. また, \(U\) は推移的集合で \(\Omega\in U\) であり, \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の十分多くの公理のモデルとなっているものとする. しかも, \(U\) は真の宇宙 \(\mathbf{V},{\in}\) における \(R(\beta)\) がそうであったように, \(|U|=\beta\), \(\forall x\in U(|x|<\beta)\), かつ \[ \forall x\subset U\big[\,\exists y\in U(x\subset y)\;\rightarrow\;x\in U\,\big] \tag{1} \]をみたすものとする.

いま, 構造 \(\langle A,R\rangle\) が外延的だったとする. 再帰的に \[ \begin{gather} W_0(A,R)=0,\\ W_{\alpha+1}(A,R)=\{\,a\in A\,:\,\mathrm{pred}(A,a,R)\subset W_\alpha(A,R)\,\},\\ \alpha\text{ が極限のとき }W_\alpha(A,R)=\bigcup_{\xi<\alpha}W_\xi(A,R) \end{gather} \]と定義しよう. すると, ある順序数 \(\alpha<|A|^+\) について \(W_{\alpha+1}(A,R)=W_\alpha(A,R)\) となる. この集合を \(\mathrm{wfp}(A,R)\) と書き \(\langle A,R\rangle\) の整礎部分という. \(\mathrm{wfp}(A,R)\) は, \(R\) に関して左向き(下向き)に閉じており, しかもその上で \(R\) が整礎的となるような \(A\) の部分集合のうち, 最大のものである. このときモストフスキ収縮 \(\pi:\langle \mathrm{wfp}(A,R),R\rangle\to\langle M,{\in}\rangle\) は同型写像であり, \(M\) は \(\mathbf{WF}\) に属する推移的集合である.

いま \(U\) に属する関係構造 \(\langle A,R\rangle\) が,

  1. \(R\) は \(A\) 上外延的である;
  2. \(\mathrm{wfp}(A,R)\) は, 整礎的な推移的集合である;
  3. \(R\) は \(\mathrm{wfp}(A,R)\) 上では \(\in\) と一致する;
  4. \(A\setminus \mathrm{wfp}(A,R)\subset \Omega\times \mathbf{WF}^U\) である

となっているということを, 構造 \(\langle A,R\rangle\) は好都合である, ということにする. \(U\) に属する外延的な関係構造 \(\langle A,R\rangle\) は, どれも好都合な構造と同型である. そこで, \(U\) に属する外延的関係構造の \(U\) における同型類の完全代表系 \(\langle A_\xi,R_\xi\rangle\) \((\xi<\beta)\) を, 各 \(\langle A_\xi,R_\xi\rangle\) が好都合な構造で, しかも \(\xi\neq \xi'\) なら非整礎部分 \(A_\xi\setminus\mathrm{wfp}(A_\xi,R_\xi)\) と \(A_{\xi'}\setminus\mathrm{wfp}(A_{\xi'},R_{\xi'})\) が共通要素をもたないように選ぶことができる. (この完全代表系が \(U\) で定義可能である必要はない.) 各 \(A_\xi\) 上で写像 \(g_\xi\) を \[ g_\xi (x)=\begin{cases} x, & \text{if } x\in \mathrm{wfp}(A_\xi,R_\xi),\\ \mathrm{pred}(A_\xi,x,R_\xi), & \text{if } x\in A_\xi\setminus \mathrm{wfp}(A_\xi,R_\xi) \end{cases} \]によって定義しよう. すると, 関係 \(R_\xi\) が \(A_\xi\) 上外延的であることから \(g_\xi\) は単射である. また整礎部分では \(g_\xi\) は恒等写像であり, 各 \(\langle A_\xi,R_\xi\rangle\) の整礎部分がそのモストフスキ像と一致する. したがって, 写像系 \(\{\,g_\xi\,:\,\xi<\beta\}\) は定義域の整礎部分では互いに両立する. また, 各写像 \(g_\xi\) の定義域の非整礎部分は, 互いに交わらない. こうして, \(\{\,g_\xi\,:\,\xi<\beta\}\) は整合的な写像系である. その和 \[ G=\bigcup_{\xi<\beta}g_\xi \]は和集合 \(A=\bigcup_{\xi<\beta}A_\xi\) 上の写像となるが, \(x\in A_\xi\setminus\mathrm{wfp}(A_\xi,R_\xi)\) のとき \(g_\xi(x)\cap(A_\xi\setminus\mathrm{wfp}(A_\xi,R_\xi))\neq0\) であることから, \(G\) は \(A\) 上の単射であることがわかる. \(G\) の定義域 \(A\) も像 \(G{“}A\) も \(U\) の部分集合であり, しかも \[ |U\setminus A|=|U\setminus G{“}A|=\beta \]であるから, \(G\) は \(U\) からそれ自身への全単射に拡大できる. この全単射をもまた \(G\) と表記することにしよう.

全単射 \(G:U\to U\) を用いて \(U\) 上の二項関係 \(\in^*\subset U\times U\) を \[ x\in^*y\;\leftrightarrow\;x\in G(y) \]によって定義しよう. すると, ふたたび演習問題[18]の要領で \(\langle U,\in^*\rangle\) が \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の十分大きい有限部分のモデルとなることがわかる. いま, \(a,r\in U\) で \((\langle a,r\rangle\) は外延的\()^{U,{\in^*}}\)であったとする. このとき \(G(a)\) 上に関係 \(\bar r\) を \[ \langle x,y\rangle\in \bar r\;\leftrightarrow\;\big(\langle x,y\rangle\in r\big)^{U,{\in}^*} \]によって定めれば, \(\langle G(a),\bar r\rangle\) は \(\langle U,{\in}\rangle\) における外延的二項関係となり, したがってただ一つの \(\langle A_\xi,R_\xi\rangle\) と同型である. \(M=G^{-1}(A_\xi)\) としよう. \(x\in^*M\) とは \(x\in A_\xi\) ということであり, \(x,y\in^*M\) すなわち \(x,y\in A_\xi\) のとき, \(x\in^*y\) とは \[ x\in G(y)=g_\xi(y)=\mathrm{pred}(A_\xi,y,R_\xi) \]ということ, すなわち \(x\mathrel{R_\xi}y\) ということにほかならない. このことから, \[ \Big(\langle M,{\in}\rangle\simeq \langle a,r\rangle\Big)^{U,{\in}^*} \]であることがわかる. (ここで同型写像が \(U\) 内で構成できることを保証するために仮定(1)を使う) また, \((M\) が推移的\()^{U,{\in}^*}\)であることも同様にしてわかる.

このように, \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の十分大きな有限部分プラス 《任意の外延的関係が推移的集合上の \(\in\) と同型になる》 というモストフスキ定理の変形のモデルを構成できる. ここで最終的なモデル \(\langle U,{\in}^*\rangle\) でどれだけの \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の公理が成立するかは, 最初の \(R(\beta)\) がどれだけの \(\mathrm{ZFC}\) の公理をみたすかで決まるが, \(\langle U,{\in}^*\rangle\) で成立させたい \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の有限部分が決まれば, それに応じて \(R(\beta)\) で必要となる \(\mathrm{ZFC}\) の有限部分が決まり, そのために \(\beta\) をどれくらい大きくとればよいかが決まる. \(\langle U,{\in}^*\rangle\) で成立させうる \(\mathrm{ZFC}^{-}\) の公理の範囲に(有限個でありさえすれば)制限はないので, このモストフスキ定理の変形は \(\mathrm{ZFC}^{-}\) と矛盾しない. これが証明すべきことだった.

この問題はKunenの2011年版 “Set Theory” (College Publications) にもExercise II.9.4として収録されています.そちらはヒントつきになっていますので,参照なさってください.(2012年8月30日木曜日)

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年7月1日)

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