第IV章 演習問題 [25]

直前の演習問題[24]の解答で, 議論の出発点において \(\mathrm{AC}\) が成立している場合を考えよう. このとき演習問題[23]の結果により \(\mathbf{WF}(U)\) も \(\mathrm{AC}\) をみたす. そこで以後は \(\mathbf{WF}(U)\) に「棲みこむ」ことにして, \(\mathrm{ZFC}^{-}\) で議論し, \(U\) は \(\forall x\in U\,(x=\{x\})\) であるような無限集合で, しかも \(\mathbf{V}=\mathbf{WF}(U)\) が成立しているものとする. その他, 演習問題[24]の解答で導入した記号を断りなしに使う.

このとき, \(\mathbf{WF}\) の任意の要素 \(a\) は \(\mathbf{V}\) において整列可能である. \(a\) の整列順序づけ \(r\) について \(r\cap(a\times a)\in\mathbf{WF}\) であり, 補題3.14より \((r\cap (a\times a)\) は \(a\) を整列順序づけする\()^{\mathbf{WF}}\) ので, \(\mathrm{AC}^{\mathbf{WF}}\) が成立する. ところで, すでに示されたとおり \(\mathbf{WF}\subset\mathbf{HA}\) である. \(\mathbf{HA}\) に属する集合 \(a\) が \(\mathbf{V}\) において整礎的であれば, 整礎性の定義が \(\mathit\Pi_1\) であることにより \(a\) は \(\mathbf{HA}\) においても整礎的であり, \(\mathbf{WF}\subset\mathbf{WF}^{\mathbf{HA}}\) となる. いっぽう, \(R(\alpha)^{\mathbf{HA}}=R(\alpha)\cap \mathbf{HA}\subset R(\alpha)\) であるから \(\mathbf{WF}^{\mathbf{HA}}\subset\mathbf{WF}\) でもあり, \(\mathbf{WF}^{\mathbf{HA}}=\mathbf{WF}\) である. 以上のことから \(\mathbf{HA}\) は \(\mathrm{ZF}^{-}\) と \(\mathrm{AC}^{\mathbf{WF}}\) と \(\neg\mathrm{AC}\) のモデルとなっている.

この文脈で, 集合 \(U\) の要素の互換が生成する \(G\) の部分群を \(H\) としよう. \(H\) は \(U\) の有限個の要素だけを動かし残りを動かさないような置換の全体である. いま置換 \(g\in H\) が有限集合 \(B\subset U\) 上の置換になっているとすれば, \(\pi\in G_B\) のとき \(\pi_*(g)=g\) となるので \(g\in \mathbf{A}\) である. また \(g\subset U\times U\) であるから \(\mathrm{tr\,cl}(g)\subset\mathrm{tr\,cl}(U\times U)\subset \mathbf{A}\) であって \(g\in \mathbf{HA}\) となる. すなわち \(H\subset\mathbf{HA}\) となっている. また, \(g\in H\) かつ \(\pi\in G\) のとき, \(g\) が有限集合 \(B\subset U\) 上の置換になっているとすれば \(\pi_*(g)\) は 有限集合\(\pi{“}B\) 上の置換になっているので \(\pi_*(g)\in H\) であり, \(H\) は \(\pi_*\) のもとで不変で \(H\in\mathbf{A}\) となる. このことから \(H\in\mathbf{HA}\) である. また, 写像にかんするいろいろの概念の絶対性により, \((H\) は写像の合成のもとで群をなす\()^{\mathbf{HA}}\).

さて, \(H\) は \(\mathbf{HA}\) において整列順序づけ可能でない. もしも \(H\) が整列順序づけ可能であったとすれば, \(U\) の二つの要素の互換の全体も整列順序づけ可能であり, 固定された(任意の)一個の要素 \(x_0\in U\) を他の要素 \(x\in U\setminus\{x_0\}\) と交換する互換の全体も整列順序づけ可能となるが, このことから \(U\setminus\{x_0\}\) が, ひいては \(U\) が, 整列順序づけ可能であることが導かれる. しかし, 演習問題[24]の結果から, \(\mathbf{HA}\) においては \(U\) は全順序づけすることすらできない.

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年7月3日)

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