第IV章 演習問題 [28]

帰納図式 \(\mathrm{AF}^*\) とは式 \(\phi(x)\) に対する \[ \forall x\Big(\,\big(\forall y\in x\phi(y)\big)\,\rightarrow\,\phi(x)\,\Big)\;\rightarrow\; \forall x\phi(x) \]という形の式をいう. これを集合 \(A\) に相対化したものを証明したい. そこで \[ \Big(\; \forall x\big(\,\big(\forall y\in x\phi(y)\big)\,\rightarrow\,\phi(x)\,\big) \;\Big)^A \]を仮定しよう. これは \[ \forall x\in A\big(\,(\forall y\in x\cap A\;\phi^A(y))\,\rightarrow\,\phi^A(x)\,\big) \tag{1} \]ということである. この仮定のもとで \[ \big(\forall x\,\phi(x)\big)^A \]を示せばよい. 結論を否定して矛盾を導くため \[ \neg\big(\forall x\,\phi(x)\big)^A \]と仮定する. これは \[ \exists x\in A\,\neg\phi^A(x) \] ということである. そこで, そのような要素 \(x\) 全体の集合 \[ B=\Big\{\,x\,:\,x\in A\land \neg\phi^A(x)\,\Big\} \] は空集合でない. 基礎の公理によると \(x\in B\) かつ \(x\cap B=0\) となるような要素 \(x\) がとれるが, \(B\) の定義に戻れば \(x\cap B=0\) とは \[ \forall y\in x\cap A\big(\neg\neg\phi^A(x)\big) \]すなわち \(\forall y\in x\cap A\;\phi^A(x)\) ということだから, (1)により \(\phi^A(x)\), したがって \(x\notin B\) となって矛盾する.

つぎの演習問題[29]の解答を見ると, \(\mathrm{AF}^*\) が \(\mathrm{ZFC}-\mathrm{Inf}\) のもとでは証明できないことがわかります. いっぽう, 上にみたとおり \(\mathrm{AF}^*\) を任意の集合 \(A\) に相対化したものは \(\mathrm{ZFC}-\mathrm{Inf}\) から難なく証明されます. これはどういうことでしょうか.

じつは \(A\) が真のクラスであったときには, 上記の証明で使った \(B\) も真のクラスでありうることになり, その \(\in\)-極小要素が存在するためには, 関係 \(\in\) について第III章の定理5.5を確立しておく必要があります. そして, この定理の証明には任意の集合が推移閉包をもつという命題が引用されています. 第III章の演習問題[19]で無限公理を使わずに推移閉包の存在を証明したときには, \(\mathrm{ZF}^*-\mathrm{P}-\mathrm{Inf}\) で議論しており, 基礎の公理はあらかじめ \(\mathrm{AF}^*\) 図式に置きかえられていました.

要するに, 推移閉包の存在を証明できてはじめて, 基礎の公理と帰納図式 \(\mathrm{AF}^*\) が同等になるわけです.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年7月4日)

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