第IV章 演習問題 [32]

この結果を得るには, \(S\) は単に \(\mathrm{ZF}\) の \(\omega\)-矛盾する拡大というだけではうまくいかず, 文の集合として再帰的である必要があると思われる. 以下, そのように仮定して議論する.

式 \(\psi\) を \(S\) が \(\omega\)-矛盾の実例としよう. つまり, “本物の”自然数について個別には \[ S\;\vdash\;\psi(\ulcorner 0\urcorner),\psi(\ulcorner 1\urcorner),\psi(\ulcorner 2\urcorner),\ldots \]であり, その一方で \[ S\;\vdash\;\exists x\in\omega\,\big(\neg\psi(x)\big) \]でもあるとする. そこで, \(S\) において対象 \(k\) を \[ k = \min\big\{\,x\in\omega\,:\,\neg\psi(x)\,\big\} \]と定義しよう. \(S\) のモデル \(\mathfrak{A}\) において, \(k^{\mathfrak{A}}\) は自然数ではあるけれども, 標準的な自然数 \(0^{\mathfrak{A}}\), \(1^{\mathfrak{A}}\), \(2^{\mathfrak{A}}\) 等々のいずれとも等しくなくて, その正体はわからない. ともあれ, \[ S\;\vdash\;\forall x< k\,\psi(x) \]である.

つぎに, \(S\) の公理の再帰的な数えあげ \(\langle\,\phi_n\,:\,n<\omega\,\rangle\) を(第I章定理14.1の意味で) \(S\) において表現する式が存在する. その式によって \(\langle\,\phi_n\,:\,n<\omega\,\rangle\) は \(S\) において定義されていて, \(S\) においては \(k<\omega\) であるから \[ S\;\vdash\;\big\{\,\phi_n\,:\,n<k\,\big\}\text{ は有限集合} \]である. このとき, 反映原理により \[ S\;\vdash\;\exists\beta\Big(\,R(\beta)\models\big\{\,\phi_n\,:\,n<k\,\big\}\,\Big) \]なので, そのような最小の \(\beta\) が \(S\) において定義される. いまそれを仮に \(b\) と名付けよう.

“本物の”自然数 \(n\) については, \[ S\;\vdash\;\psi(\ulcorner 0\urcorner),\psi(\ulcorner 1\urcorner),\ldots,\psi(\ulcorner n\urcorner) \]であるから, \[ S\;\vdash\;\ulcorner n\urcorner < k \]であり, したがって, \[ S\;\vdash\;\Big(\,R(b)\models\phi_{\ulcorner n\urcorner}\,\Big) \]となる. ゆえに, \(S\) の“本物の”公理 \(\phi\) については (\(\phi\) はある本物の自然数 \(n\) について \(\phi_n\) と一致するはずなので) \[ S\;\vdash\;\phi^{R(b)} \]となる.

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月29日)

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