第IV章 演習問題 [7]

外延性公理: \(H(\kappa)\) が推移的集合だから \(H(\kappa)\) において外延性公理は成立する. (補題2.4)

基礎の公理: 任意のクラスにおいて成立する. (補題2.12)

内包性図式: \(y\subset x\in H(\kappa)\) のとき, \(\mathrm{tr\,cl}(y)\subset \mathrm{tr\,cl}(x)\) なので \(y\in H(\kappa)\) でもある. このことから, 内包性公理は \(H(\kappa)\) において成立する. (系2.6)

対の公理: \(\mathrm{tr\,cl}(\{x,y\})=\{x,y\}\cup\mathrm{tr\,cl}(x)\cup \mathrm{tr\,cl}(y)\) であるから, \(x,y\in H(\kappa)\) のとき \(\{x,y\}\in H(\kappa)\) である. このことと補題2.10により対の公理は \(H(\kappa)\) において成立する.

和集合の公理: \(\mathrm{tr\,cl}(\bigcup x)\subset\mathrm{tr\,cl}(x)\) であるから, \(x\in H(\kappa)\) のとき \(\bigcup x\in H(\kappa)\) でもある. このことと補題2.10により和集合の公理は \(H(\kappa)\) において成立する.

無限公理: \(\kappa>\omega\) であるから \(\omega\in H(\kappa)\) である. \(H(\kappa)\) に対しても \(0\) と \(S\) 演算は絶対的である. そこで \(H(\kappa)\) においても \(\omega\) が無限公理によって要請される集合になっている. (補題3.12)

冪集合の公理について: まず \(H(\kappa)\) において冪集合の公理が成立したと仮定する. 補題2.9によれば, これは \(x\in H(\kappa)\) のとき, ある \(y\) について \(\mathcal{P}(x)\cap H(\kappa)\subset y\in H(\kappa)\) となる, ということであった. ところが, 内包性図式について上に述べたことから, \(x\in H(\kappa)\) のとき \(\mathcal{P}(x)\subset H(\kappa)\) であることがわかる. そこで, \[ \mathcal{P}(x)=\mathcal{P}(x)\cap H(\kappa)\subset y\in H(\kappa) \] したがって \(\mathcal{P}(x)\in H(\kappa)\) となる. このことから, \[ \forall \lambda<\kappa\big(\;2^\lambda<\kappa\;\big) \]がわかる (すなわち, \(\kappa\) は強極限基数である). このとき \(\beth_\alpha<\kappa\,\rightarrow\,\beth_{\alpha+1}<\kappa\) なので, \(\beth_\alpha<\kappa\) となる \(\alpha\) 全体の集合の上限を \(\gamma\) とすれば, \(\gamma\) は極限順序数で, \(\kappa=\beth_\gamma\)となる.

逆に \(\kappa=\beth_\gamma\) となる極限順序数 \(\gamma\) があったとしよう. このとき, \(\kappa\) は強極限基数である. 任意の要素 \(x\in H(\kappa)\) について, 無限基数 \(\delta<\kappa\) を \(x\in H(\delta)\) となるように選ぶ. このとき, \(|\mathcal{P}(x)|=2^{|x|}\leq 2^{\delta}<\kappa\) であり, 一般に \(\mathrm{tr\,cl}(\mathcal{P}(x))=\mathcal{P}(x)\cup\mathrm{tr\,cl}(x)\) であることと合わせて \(|\mathrm{tr\,cl}(\mathcal{P}(x))|<\kappa\) であり, \(\mathcal{P}(x)\in H(\kappa)\) となる. 補題2.9によって, このとき \(H(\kappa)\) において冪集合の公理が成立する.

置換公理について: すでに定理6.5で \(\kappa\) が正則基数であるときには \(H(\kappa)\) において置換公理が成立することが指摘された. この正則性の条件は必要である. このことを示すため, \(H(\beth_\omega)\) において置換公理が成立しないことを示そう.

冪集合公理についての議論で先に見たとおり, \(H(\beth_\omega)\) は冪集合演算のもとで閉じており, \[ \omega, \mathcal{P}(\omega),\mathcal{P}(\mathcal{P}(\omega)),\mathcal{P}(\mathcal{P}(\mathcal{P}(\omega))),\ldots \]といった集合はすべて \(H(\beth_\omega)\) に属する. ところがこれらをすべて集めた可算集合 \[ A = \big\{\,\omega, \mathcal{P}(\omega),\mathcal{P}(\mathcal{P}(\omega)),\mathcal{P}(\mathcal{P}(\mathcal{P}(\omega))),\ldots\,\big\} \]は, 和集合の濃度が \(\beth_\omega\) であるため \(H(\beth_\omega)\) に属さない. いま, 式 \(\phi(n,f)\) を \(n\) は自然数, \(f\) は \(n+1\) を定義域とする関数で, \[ f(0)=\omega\land \forall i<n\big(\,f(i+1)=\mathcal{P}(f(i))\,\big) \] となっている, と主張する式としよう. さらに式 \(\psi(n,x)\) を \[ \exists f\,\big(\,\phi(n,f)\land x=f(n)\,\big) \]という式とする. このとき \[ \forall n\in \omega\,\big(\,\exists!f\,\phi(n,f)\land \exists!x\,\psi(n,x)\,\big) \] であり, しかも各 \(n\) に対応する \(f\) と \(x\) はいずれも \(H(\beth_\omega)\) に属する. さらに, 関連する概念がすべて \(H(\beth_\omega)\) に対して絶対的であることから \[ \big(\forall n\in \omega\,\exists!x\,\psi(n,x)\big)^{H(\beth_\omega)} \] が成立する. ところが, 置換図式で存在が保証される像集合 \[ \big\{\,x\,:\, (\exists n\in\omega\,\psi(n,x))^{H(\beth_\omega)}\,\big\} \] は, 先ほど例に挙げた集合 \(A\) にほかならない. この集合を部分集合として含む集合は, 和集合の濃度が \(\beth_\omega\) 以上となるので, 決して \(H(\beth_\omega)\) に属さない. したがって, \(\psi(n,x)\) についての置換公理 \[ \forall n\in \omega\,\exists!x\,\psi(n,x)\;\rightarrow\;\exists y\forall n\in \omega\,\exists x\in y\,\psi(n,x) \] は \(H(\beth_\omega)\) において成立していない.

とはいえ, \(H(\kappa)\) において置換公理が成立するためには必ず \(\kappa\) が正則基数でなければならないかというと, そうとも限らないところがまた面白いところです. \(\beth_\omega\) の場合には正則性への反例を実効的に構成でき, それゆえに置換公理の反例をも構成できたのですが, すべての特異基数が具体的実効的に小さな共終部分集合をもつとは限りません. 定義可能な共終部分集合をもたない特異基数 \(\kappa\) について \(H(\kappa)\) が置換公理をみたす可能性はあるわけです. 実際 \(\kappa\) が強到達不能基数であれば, \(\mathrm{cf}(\delta)=\omega\) でありながら \(H(\delta)\) において置換図式が成立するような特異基数 \(\delta\) が \(\kappa\) 以下に(定常集合をなして)存在します. ただし, そのような特異基数 \(\delta\) の存在は (実在主義者の目には明らかに正しいと映るかもしれませんが) \(\mathrm{ZFC}\) からは証明できません.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月12日)

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