第V章 演習問題 [3]

\(\mathrm{ZF}\) の公理の再帰的な数えあげ \(\langle\,\phi_i\,:\,i<\omega\,\rangle\) を \(\mathrm{ZF}\) 内部で形式化する. そして, 理論 \(S\) において \(\mathrm{En}^*(m,A,n)\) を \[ \mathrm{En}^*(m,A,n)=\begin{cases} \mathrm{En}(m,A,n),&\text{if }\mathrm{CON}(\{\,\phi_i\,:\,i\leq \min\{m,n\}\,\})\\ 0,&\text{if }\neg \mathrm{CON}(\{\,\phi_i\,:\,i\leq \min\{m,n\}\,\}) \end{cases} \] と定義しよう. 式 \(\mathrm{CON}(u)\) については第IV章演習問題[31]の解答を見なさい. 個々の具体的な (メタ理論の自然数に対応する) 番号 \(k=0,1,2,\ldots\) については \(\phi_0,\ldots,\phi_{k-1}\) の無矛盾性が \(\mathrm{ZF}\) から証明されるので, \[ \mathrm{En}^*(\ulcorner k \urcorner,A,n)=\mathrm{En}(\ulcorner k \urcorner,A,n) \]となっている. メタ理論における式 \(\phi(x_0,\ldots,x_{n-1})\) の構成に関する帰納法で, メタ理論における自然数 \(k\) を すべての \(A\) について \[ \big\{\,s\in A^n\,:\,\phi^A(s(0),\ldots,s(n-1))\,\big\} =\mathrm{En}(\ulcorner k \urcorner,A,n) \quad\big(=\,\mathrm{En}^*(\ulcorner k \urcorner,A,n)\big) \]となるようにとれることが示される. したがってこの \(\mathrm{En}^*\) 関数は補題1.8に対応する条件を満たす. そこで \[ \mathrm{Df}^*(A,n)=\big\{\,\mathrm{En}^*(m,A,n)\,:\,m\in \omega\,\big\} \]とおけば, 補題1.3に対応する条件が満たされ, 補題1.5と補題1.6に対応する条件が成立することもわかる. 補題1.7に対応する条件は式 \(\mathrm{CON}(u)\) の絶対性から導かれる.

つぎに, \[ \mathrm{Df}^*(A,n)\subset \mathrm{Df}(A,n) \] は \(\mathrm{En}^*\) 関数の定義からすぐわかる. そして, \(\neg\mathrm{CON}(\ulcorner\mathrm{ZFC}\urcorner)\) から導かれる 《\(\mathrm{ZF}\) の矛盾の証明》 の出発点となる公理のすべてが \(\phi_0,\ldots,\phi_{m-1}\) に含まれるほどに十分大きな \(m\) をとり, また \(n\geq m\) とすれば, 定義からすべての集合 \(A\) について \(\mathrm{En}^*(m,A,n)=0\) となるから, \(\mathrm{Df}^*(A,n)\) は有限集合となる. いっぽう, たとえば \(A=\omega\) のとき, \(\mathrm{Df}(\omega,n)\) には \[ R_k=\big\{\langle i,i+1,\ldots,i+n-1\rangle\,:\,i\leq k\big\} \]という形の互いに異なる関係がすべて属するはずなので, \(\mathrm{Df}(\omega,n)\) は無限集合である. したがって, 十分大きなすべての \(n\) について \(\mathrm{En}^*(\omega,n)\neq\mathrm{En}(\omega,n)\) となる. こうして, \(\mathrm{En}^*\) と \(\mathrm{Df}^*\) が求められる条件のすべてを満たすことがわかる.

この問題の教訓は, \(\mathrm{Df}(A,n)\) が構造 \((A,{\in})\) において定義可能な \(n\) 項関係の全体であるという, もともとの定義の意図する命題を, 形式的体系において確立することはできない, という点にあると言えるでしょう.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年7月15日)

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