前半のうち, \(\{x\}\), \(\{x,y\}\), \(\langle x,y\rangle\) については第III章演習問題[4]で \(\mathrm{rank}(x)\) について考えたのと同様にして \[ \begin{gather} \rho(\{x\}) =\rho(x)+1,\\ \rho(\{x,y\}) =\max\{\rho(x),\rho(y)\}+1,\\ \rho(\langle x,y\rangle) =\max\{\rho(x),\rho(y)\}+2, \end{gather} \] である. \(\{x,y\}\) について示せばよいだろう. \(\max\{\rho(x),\rho(y)\}=\alpha\) としよう. すると, \(x,y\in L(\alpha+1)\) であって \[ \{x,y\}=\big\{\,z\in L(\alpha+1)\,:\,(z=x\lor z=y)^{L(\alpha+1)}\,\big\} \] であるから \(\{x,y\}\in L(\alpha+2)\), したがって \(\rho(\{x,y\})\leq\alpha+1\) である. 一方, \(\{x,y\}\in L(\beta+1)\) ならば \(x,y\in L(\beta)\) のはずだから \(\alpha+1\leq\beta\) である. したがって \(\rho(\{x,y\})\geq\alpha+1\) である.
いっぽう, \(\bigcup x\) や \(x\cup y\) については, このような評価を与えることはできない. というのも, たとえば \[ \rho(\omega_1^{\mathbf{L}})=\rho(\mathcal{P}(\omega)^{\mathbf{L}})=\omega_1^{\mathbf{L}} \] なのに, \[ \begin{gather} \rho\left(\bigcup\omega_1^{\mathbf{L}}\right)=\rho(\omega_1^{\mathbf{L}})=\omega_1^{\mathbf{L}},\\ \rho\left(\bigcup\mathcal{P}(\omega)^{\mathbf{L}}\right)=\rho(\omega)=\omega \end{gather} \] なのだから, \(\rho(x)=\omega_1^{\mathbf{L}}\) という情報だけから \(\rho(\bigcup x)\) を言いあてることはできない. また, \(a\in\mathbf{L}\) をなにか \(\omega\) の部分集合で \(\rho(a)>\omega\) となるものとし, \(b=\omega\setminus a\) とおけば, \(b\in\mathbf{L}\), \(\rho(b)=\rho(a)>\omega\) となっていて, \(\rho(a\cup b)=\rho(\omega)=\omega\) だが \(\rho(a\cup a)=\rho(a)>\omega\) である. ということは, \(\rho(x)\) と \(\rho(y)\) だけを知って \(\rho(x\cup y)\) を言いあてることもできない. これらについては \[ \begin{gather} \rho\left(\bigcup x\right)\leq \rho(x) < \rho\left(\bigcup x\right)^{{++}\mathbf{L}},\\ \rho(x\cup y)\leq \max\{\rho(x),\rho(y)\} < \rho(\{x,y\})^{+\mathbf{L}} \end{gather} \] という粗い評価しかできない.
直積 \(x\times y\) についても注意が必要だ. \(\max\{\rho(x),\rho(y)\}=\alpha\) とおくと, 一般には \(x\times y\) は \(L(\alpha+1)\) の定義可能な部分集合になっているので, \(\rho(x\times y)\leq\alpha+2\) となることはすぐにわかる. また, \(x\times y\) から \(x\) と \(y\) を求めるのは簡単なので, \(\mathbf{L}\) の階層で \(x\times y\) が生成されるとき, あるいはそれ以前に, \(x\) も \(y\) も生成されているはずで \[ \alpha\leq \rho(x\times y)\leq \alpha+2 \] ということになる. 一般には, この評価が最良である. ここでは \(\in\)-階数の場合と違って, \(x\) や \(y\) の要素が \(\alpha\) よりうんと小さな \(\beta\) の段階ですでに揃っている場合もある. つまり \(\beta<\alpha\) かつ \(x,y\subset L(\beta)\) となっている可能性もあり, この場合には \(\rho(x\times y)=\alpha\) ということになりうる. 第III章演習問題[4]で \(\mathrm{rank}(x)\) について考えたときは, \(\alpha\) が極限順序数かどうかで場合分けできたのだが, \(\rho(x)\) についてはそうはいかない. 結局, 順序数 \(\rho(x)\) と \(\rho(y)\) をみただけでは, \(\rho(x\times y)=\max\{\rho(x),\rho(y)\}+k\) (\(k=0,1,2\)) のどれが正解なのかわからない. \[ \hbox{-*-*-*-} \]
問題の後半では \(\mathbb{Z}\), \(\mathbb{Q}\) および \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\) について考えている. 通常の集合論的な構成では \(\mathbb{Z}\) を \(\omega\times\omega\) の商集合として与える. \(\mathbb{Z}\) の要素とは, なんらかの \(k\in\omega\) について \[ \{\,\langle m,n\rangle\in\omega\times\omega\,:\,m+k=n\,\},\quad \{\,\langle m,n\rangle\in\omega\times\omega\,:\,m=n+k\,\} \tag{*} \] のいずれかの形に書けるものであるから, これらはすべて \(L(\omega+1)\) の要素になっている. したがって \(\mathbb{Z}\subset L(\omega+1)\) であり, (*)の形の集合の全体を \(L(\omega+1)\) から取りだすことで \(\mathbb{Z}\in L(\omega+2)\) となる. 次に \(\mathbb{Z}\) 上の演算を \(\omega\) 上の演算を用いてしかるべく定義し, \(\mathbb{Z}\times(\mathbb{Z}\setminus\{0\})\) の商集合として \(\mathbb{Q}\) を与えることになるが, これもまた \(\mathbf{L}\)-階数を2ないし3上げるだけで済む. こうして \(\mathbb{Z}\) と \(\mathbb{Q}\) は \(L(\omega+\omega)\) に属する.
実数直線をデデキントの流儀で定義することにして, 個々の実数は \(\mathbb{Q}\) の切断の下組であると考えよう. つまり, \(\mathbb{R}\) の要素は \(\mathbb{Q}\) の上に有界で空でなくて最大要素をもたず下向きに閉じた部分集合である. いま \(\mathbb{Q}\) は \(L(\omega+\omega)\) に属し, \(\mathbb{Q}\) の通常の順序づけも二項関係として \(L(\omega+\omega)\) の要素になっている. いま, \(\mathbb{Q}\) のなんらかの部分集合 \(x\) が \(\mathbf{L}\) に属しているとして, それが実数であるかどうかの判定は \[ x\neq0\land x\neq\mathbb{Q}\land \forall s\in\mathbb{Q}\big[\, s\in x\,\leftrightarrow\,\exists t\in x(s<_{\mathbb{Q}}t)\,\big] \] という \(\mathbf{V}\), \(\mathbf{L}\) に対して絶対的な式でなされる. つまり, \(\mathbf{L}\) の要素が実数であるかどうかは \(\mathbf{V}\) で考えても \(\mathbf{L}\) で考えても同値である. こうして \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}=\mathbb{R}\cap \mathbf{L}\) が成立する.
ひとつひとつの実数が \(\mathbb{Q}\) の部分集合なのだから, \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\subset\mathcal{P}(\mathbb{Q})^{\mathbf{L}}\) であり, \(\mathbb{Q}\in L(\omega+\omega)\) であるから定理4.6から \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\subset L(\omega_1^{\mathbf{L}})\) ということになる. このとき \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\) は \(L(\omega_1^{\mathbf{L}})\) において定義可能な部分集合となり, \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\in L(\omega_1^{\mathbf{L}}+1)\) となるから \(\rho(\mathbb{R}^{\mathbf{L}})\leq \omega_1^{\mathbf{L}}\) である. また \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\) は\((\)可算でない集合\()^{\mathbf{L}}\)なので, \((\)可算な\()^{\mathbf{L}}\)順序数 \(\alpha\) については \(\mathbb{R}^{\mathbf{L}}\not\subset L(\alpha)\) となる. したがって, \(\rho(\mathbb{R}^{\mathbf{L}})\geq \omega_1^{\mathbf{L}}\) である.
このようにこの問題の前半は言葉どおりには解けないのですが, これは出題ミスというより, 注意喚起のためにあえてこのようにしているのかもしれません. 後半の解答では, \(\mathbb{Z}\) や \(\mathbb{Q}\) の演算や順序づけの定義を省略して概略だけを書いているので, これだけでは何のことやらわからないかもしれません. 実は, \(\alpha\) が \(\omega\) より大きな極限順序数のときには \(L(\alpha)\) が二つの集合の直積を作る操作と《\(\Delta_0\)-定義可能》な部分集合について閉じているという一般的な事実から, \(\mathbb{Z}\) や \(\mathbb{Q}\) の(一階の)議論がそれらの \(L(\alpha)\) において展開できることが導かれます.