ぼくと、ぼくの教えた子どもらでコンクールなり演奏会なりに出たとき、「もっと子どもにあった選曲をしてはどうですか?」とよく言われる。昔たいへんお世話になったベテランの先生に言われたこともあったし、よその学校の仲良しの先生に助言されたこともあった。ああ、ぼくは人づきあいがたいへん悪いので、むこうは仲良しだなんて思っとらんかもしれんな。
ぼくが大好きな曲で、子どもには絶対にやらせない曲のナンバーワンは、バルトーク作曲「中国の不思議な役人」である。もし、この音楽劇のビデオが出たら、18歳以下はまちがいなく視聴禁止。そんな筋の音楽を演奏するのに、全日本の先生方はどうやって子どもに説明してるんだろう。いっぺん練習を見せてほしい。もひとつ。R.シュトラウス作曲「7つのヴェールの踊り」。
先生「ひとつずつ服を脱いでいって、最後はここでぜんぶ脱いじゃうんだよ!」
生徒「わあ、すごいね!」
先生「じゃあこのときのサロメの気持ちになって、みんなでそれを表現してみよう」
生徒「はい!」
先生「分からないときは、絵に描いたり詩にあらわしたりして情景を感じ取ろう」
生徒「みんなで話し合って、パートごとに発表したらいいと思いまーす!」
ありえん。絶対にありえん。ぼくは、ポリシーとしてこれらの曲は中学生には絶対にやらせない。
それでは本題。ブルックナーは大人に合っているか。
指揮者「時は中世、場所は南ドイツの緑深き森の中。大きなお城がたってます。」
団員A「ほんとしんどいなこの曲は。はよ練習終わってくれんかな」
指揮者「最初のホルンは、お城の塔のてっぺんから夜明けを告げる合図です。」
団員A「これ終わったら飲みに行こうよ。いつものとこ。そうあれ。王様ゲーム。うひひ」
指揮者「そう、今日は王様が狩りに出かける日です。」
団員A「オレらは今日は飲みに行く日なんだよ!」
指揮者「城門の内側では、王様とその部下が10人ほど、すっかり準備を終えて待っています。」
団員A「その王様の名前こそ、姓はナカレマソ、名は2世。人呼んでパンパン!」
指揮者「夜明けと同時に門がぎいいっと開きます。おお、いっせいに騎馬たちがまけでます!」
団員A「まけでますはないだろ、まけでますは」
指揮者「ではみなさんで、最初からください」
団員A「やばっツバ抜いてないツバ」
大久保健二(平成18年11月 松山ウィンドオーケストラ指揮者)
© 2006, Matsuyama Wind Orchestra, Kenji Okubo, and Hiroshi Fujita