ああ!フォーレのレクイエム その4

松山ウィンドオーケストラ 大久保健二

聖霊の象徴としてのハトポッポ

先生になって始めて赴任した中学校の吹奏楽部で、第3楽章をアレンジしてやった。技術的に簡単でゆっくりしていて、ハーモニーやユニゾンが多くて、歌うフレーズが多い。当時は、新メンバーに勉強としてやらせるにはちょうどいいと思っていた。今では、バンドの基礎練習のためにゆっくりした息の長い曲を使うことは絶対になく、それは完全に指揮者の思い込みだと断言できるが。なにしろあこがれていたバンドの指導であるから、いっしょうけんめい楽譜を書いた。ハインズレーの楽譜セットは必ず朱色の厚紙で包装されていて、それを真似して画用紙を切って巻いたりした。子どもらはすごく吹きにくそうにやっていたが、ぼくは一人、吹奏楽でフォーレができる喜びに浸っていた。ひどい話で恥ずかしいが、だがなつかしいな。ああ今もそうか。困ったもんだ。

第4楽章。人気の高い曲で、アダージョなんちゃらっていうCDにはもれなく入ってる。じつは、ぼくはこの楽章がみんなほど好きではない。理由は、メロディの中にあるソのせいだ。最初から歌っていくと、「ドードファーファミーレミー」ここまではいいよ。問題は次。「ミソミレミードーレーミファー」このソがなんとなくいやなのだ。しかももいっぺんくる。「ミソミレミードードーシドー」この、なんだかどんくさいような幼稚っぽいような3度の跳躍。余談だが、ぼくは絶対音感がないので全部移動ドだ。

これをぼくが聴いていやじゃないように変えるとしたらこうなる。「ミファミレミードーレーミファー」名づけてフォーレ=大久保リメイクピエイエズ。「ミファミレミードードーシドー」全然違和感がないねえ。さらっと流れるメロディになった。さあ、しかしここで大変なことが起こった。このフォーレ=大久保リメイクピエイエズ、ぜんぜん面白くないのだ。だれにでも作れるような、何の個性もないつまらんメロディ。オリジナルは一回聴いたら忘れられないが、リメイク版はおぼえられない。大変だ。やっぱもとにもどそう。

「はとぽっぽ」に、やっぱりファをとばしてミ→ソ→ミの跳躍がある。日本的で、子どもっぽくて、たわいない。こっちはただのヨナ抜きと呼ばれる日本音階だが、フォーレが使ったのは「日本的」が抜けて「子どもっぽく純真で愛らしい天使」のイメージのほうである。ぼくはそこに「日本的」なものが聴こえてしまって、いまいちイメージが定まらなかったというわけ。しかたない。CDでは、ずっしりした体格のおばさんが声を張り上げて、ヴィブラートを低めにワオワオきかして歌うのだから。