ああ!フォーレのレクイエム その5

プログラム曲目解説
フォーレのレクイエム演奏にあたって

松山ウィンドオーケストラ 大久保健二

ご存知ダヴィンチの天使

第1楽章「キリエ」。どこが好きって、前奏が終わって少しの沈黙のあと、おもむろに始まるあの2小節間が大好き。あれをオルガンでやってるように、冷たく、やわらかく、やさしく、決然と演奏したい。練習のときに「冷たく、しかしやわらかく」と指示をして、何かそんなものをたとえに持ち出そうとして、「とうふ?」と言ってしまった。よりによって。が、彼らの出した音はまさにぼくの欲しかった音だった。

第2楽章「奉献唱」。←いまだに読み方と意味が分かりません。2声に分けられたクラリネットの、静かでゆっくりとした部分。最近入団した高橋さん(母)が、ピッチが合わなくてとても吹きづらそうで、吹いたりやめたり、心細そうにしていた。それをさっそうと音量でカバーしたのが山根さんだった。彼女はけっこう古くからの団員だが、これまでトップを受けもって目立つようなことはなかった。「合わなくてもいいから、とりあえず大きく吹いてやろうじゃないのっ」と、音で示した彼女はすごく頼もしかった。

第3楽章「サンクトゥス」。トランペットとサクソフォンのユニゾン。前にやったときはウィンドきっての美女二人が担当して、ピッチがあわなくて苦しんだ。今回はぴったり。いやいや、プレッシャーじゃないよ渋谷君。あと、鍵盤を担当している二人の男が、どうみても屋台でたこ焼きを焼いているオヤジ。このことはお客さんと私だけの秘密にしていただいて、本番中に笑わないように気をつけてください。

第4楽章「ピエ・イエス」。フルートソロは井上さん、あだ名は「ウマさん」。旧姓が「原馬(はらうま)」さんで、めずらしい名前だったから「ウマさんウマさん」と呼んでいたら、結婚してしまってすごく普通の名前になってしまった。もっと「いちもんじさん」とか「おにがわらさん」とか、パワーアップを期待してたのに。

第5楽章「アニュス・デイ」。前に編曲したときは音が厚すぎて、みんなしんどかった。そこで今回は最小限の楽器だけを使ってオーケストレーションしたら、バス音のオクターブ下の音がなくなってしまった。もちろん楽譜を書く段階で分かってはいたが、「まあええわ。橘さんがなんとかしてくれるやろ」と思ってそのまま音だしをしてみた。すると、これがなかなかいい!ふわっと宙に浮いたような感じがして、前奏とのさかい目がよりくっきりとききとれるようになっていた。思いがけない効果にけっこう感動したので、みんなには「というような効果をねらってわざと音をうすくしたのだ」とウソをついてしまった。

第6楽章「リベラ・メ」。二分音符=60は、きっとまちがいだと思うんだよなあ。フォーレの自筆譜を見たら、絶対に四分音符=60になってるはずだ。だってテンポのとり方が宇宙一適切なチェリビダッケの演奏が、こんぐらいだもん。そこで、楽譜に四分音符=60と最初から書き込んで何食わぬ顔して楽譜を配ったら、藤田さんにバレてしまった。うちのカミさんには「あんたの振りはじめの一拍の、倍の速さで出てやる」と脅された。

第7楽章「天国にて」。管楽器にとっても天国になるように編曲した。伴奏はぜんぶ打楽器にやらした。チャイムの篠田さん、なんかとっても楽しそうですね。この楽章の最初の音だしのあと、「もしぼくが死んだら、この編曲とこのメンバーでこれ演奏してください!」と思わず言ってしまった。 (2006年5月)