編曲者・指揮者による解説『マエストロへの道』(第7回)

洗濯は恐ろしい?

ショスタコーヴィチ作曲 交響曲第7番「レニングラード」

その7

〜閑話休題?テーマは「選曲」!〜

松山ウィンドオーケストラ指揮者 大久保健二

いわゆる「選曲」というのはすごくおそろしい。今まで何回も選曲に携わってきたが、これはほんとにいい選曲だった!当たりだった!とあとから言える選曲は、片手でかぞえるほどしかない。いい選曲のときは、あんまり練習に苦労しないというか、自然に曲に乗せてもらったというか、本番まで「けっこういい感じ」が続く。しかし、毎回ものすごく頭をひねって考えるのだが、結局ほとんどが何かしら満足のいかないものになる。考えすぎるのかな。たしかに、吹奏楽コンクールでシュニトケのレクイエムを中学生とやろうとしたときは、カミサンに止められた。

ぼくの考える今までのベスト選曲ナンバーワンは、大学のときにやったアンサンブルだ。プロコフィエフのピアノソナタ第7番の第一楽章を、フルート×2、クラリネット、アルトサクソフォン、バリトンサクソフォンという、へんてこりんな五重奏にアレンジした。メンバーは、同じ大学の吹奏楽団の他のアンサンブルにもれた寄せ集め、フルートはぼく。この編成は、ガラクタのようなおもちゃのようなサウンドがして、なんともいえない安っぼさが売り(?)だ。プロコフィエフの、どこか機械じかけっぼい不気味な人形が踊るような冷徹なユーモアと、戦争への不安や凄みの同居する曲想にぴったりだった。細かい音あわせや反復練習はほとんどせず、練習はいつも、曲の解釈について互いに考えを主張して実験したり、たとえ話をして盛り上がったりすることが多かった。スコアは、アルトを担当した友人に記念にあげたので、今手もとにはパート譜しかない。当然、再演される機会はない。

松山ウィンドの選曲で心に残っている選曲もいくつかある。タイボルトの死がない「ロミジュリ」、50歳のおばちゃんを熱くさせた「マクベス夫人」、だれかが「やりたいやりたいやりたい」とわがままゆってスネた「ローマの松」、すごく変な解釈の「オセロ」、民衆が撃たれて死ぬ前に団員がバテて死んだ「11番」。でもベスト選曲というにはどこか不満が残る。そういう意味でベストは、サマコン「ぐるりよざ」かな・・・・。演奏のよしあしや、他の団員がどう思っているかは別ですよ。この曲の演奏で、うちの方向性が決まったのは確か。あのときの手ごたえを、あのときの感じをもう一度、いやそれ以上の演奏を、と追い求めて定期演奏会もついに第10回になってしまった感じだ。もう「ぐるりよざ」の記憶もだいぶかすんでしまった。

第10回といやあ、次回、第10回定期演奏会のメインを何にしたらよいか、今、非常に悩んでいる。ウィンドは最近大曲志向になってきた。演奏会が1年に一回になったのと、オーケストラに負けない大きな曲をメインでかますことに、自分たちの個性を見つけつつあるからだ。指揮者が変わったらそれも変わるだろうけど、まだぼくでいいと言ってくれているうちは、しこしことアレンジにいそしむことにする。

ないしょだが、今、候補として考えているのは、

ハチャトゥリャン/交響曲第2番「鐘」・・・・真剣なガイーヌ。
オネゲル/交響曲第3番「典礼風」・・・・ぼくがこの曲の内容を理解できん。
モーツァルト/レクイエム・・・・アーメンフーガはぼくが作曲した!
マーラー/交響曲第6番「悲劇的」・・・・ぼくが死んだら第3楽章流してください。
プロコフイエフ/交響曲第3番・・・・この曲ができたらもう死んでもいい。
ショスタコーヴイチ/交響曲第4番・・・・この曲をするなら生き返ってもいい。
ムソルグスキー/展覧会の絵・・・・もちろんリムスキーコルサコフ版をやる。
小山清茂/能面・・・・全員能面をつけてステージに上がる。がっ楽器が吹けん!
ノーメンズ・オブ・ラブ・・・・いったいどんな曲になるのだろう。
ネリベル/テイコティコ・・・・想像できん。
交響組曲「サザエさん」・・・・パイプオルガン、バンダ金管、オフイクレイド必要。

・・・というラインナップになっております。「このおっさんには何をゆうても聞かんし、もう好きにさせとけ!」っていう団員の激励の声が飛ぴそうです。ほんと、何になるんでしょう?

そういえば今回1曲目にやる「アルメニアンダンスI」は、ウィンドの記念すべき第1回定期演奏会で演奏した曲だ。そのときは初代指揮者の白石信宏さんという方のこだわりで、IもIIも両方、松山ではめずらしい全曲演奏だった。今回再ぴ取り上げたのは、高校生団員が非常に多くなったことや、スタンダードなオリジナル曲をちゃんとやりたかった、というような理由による。あと、2曲目の「ゴジラ」は、映画音楽やないか!しかもガキンチョが人差し指でピアノをたたきながら歌う「ゴジラ、ゴジラ、ゴジラとメカゴジラ」のあれかい!前からおかしいやつだとは思っていたが、ウィンドの指揮者もついにおかしくなったのか。

「ゴジラ」をバカにする人は、それを作曲者の伊福部昭氏の目の前でいえるか。弟子である和田薫氏のすばらしい編曲による「ファンタジー」と「マーチ」は、日本人の生き方と心にあふれた、他の分野にはどこにもない魅力を持った生粋の吹奏楽曲だ。

(平成15年10月)

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