組曲「展覧会の絵」(M.ムソルグスキー作曲)その3

〜古城、やはりコールアングレがふさわしい〜

松山ウィンドオーケストラ 大久保健二

展覧会-3

断言してもいい!どんなロシア人が編曲しても、このメロディはコールアングレ。アルトサクソフォンの名旋律の代表みたいになってるこの曲だが、とても考えられない。ショスタコーヴィチがサクソフォンを使うときは、ファシストの娘のスケベな踊りか、居酒屋のジャズバンドのみ。プロコフィエフは必ずテナーを用いて、クラリネットやファゴットの響きの補強か、もしくはその中間の音色がほしいときに素朴に使った。ラベルのアイディアはすごくおもしろいが、ムソルグスキーがサクソフォン使うわけないでしょう。最初から「サクソフォン」という選択肢をのけたら、やはりコールアングレがふさわしい。

前に紹介したNHKの本の中に、明らかにこの曲のもとの絵だろうな、と思わせるのが一枚のっている。いっけん、どこの国のどの時代のものかよくわからない、むにゅむにゅした感じのりんかくをもった見るからに古びたお城の前に、薄く人影が見える。スターソフは「吟遊詩人が歌ってる」と紹介したが、そういうしゃれた見方もじゅうぶんありだな。この絵は、夕方だと思われるような色調と、ななめからの日の光のさしこみ方が特徴的で、なんとも物悲しい、さびしい雰囲気が支配している。まさにコールアングレにふさわしい。

ピアノで演奏するときは当然、右手はメロディ、左手は伴奏、になるから、伴奏の音の重ね方は1オクターブ内に制限される。人間の左手一本で2オクターブ以上の和音は不可能なのだ。そこで、バンドに編曲するときには、まず伴奏の和音をどのくらい余分に重ねるのか、決めなければならない。芸がない場合は、おとなしく原曲に忠実に編曲する。弦楽器はそれでもいい。弦楽器はもともと音色に含まれる倍音が非常に豊かなので、1オクターブ内の重ね方でもじゅうぶんに厚く響く。しかし管楽器は、一つ一つの音色は多彩だが、単純で倍音に乏しい。クラシックアレンジ曲をバンドでやっていて、「なんだか音がうすいなあ?」と感じた経験ないですか?それは、弦楽器のバイオリン1→バイオリン2→ビオラ→チェロ→コンバスを、そのまま上からフルート→クラ→サクソフォン→バス関係の楽器もろもろ、と、よく考えずに置き換えてしまっているからだ。(余談だが、ギャルドはこれにサクソルン、ビューグルをふんだんに加えて複雑な倍音を作り出し、弦楽器に似た響きを出しているのだ。)ウィンド編曲では、今そろっている編成でなるべく豊かな倍音を出すために、サクソフォン族とクラリネット族、バスセクションと金管楽器の音色をなるべくたくさん混ぜて、2オクターブからあるいは3オクターブまで和音を拡大させて重ねている。そのため、これらの楽器群に埋もれないような、特別な音色を持った楽器にソロをさせる必要があり、どうしてもコールアングレがふさわしい。

あと、わが松山ウィンドには嶋谷さんというオーボエ野郎がいて、オーボエはもちろんコールアングレ、オーボエダモーレまで用意して出番をねらっている。そりゃあコールアングレがふさわしい。


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