て日々

2019年6月

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県立図書館に行った。目当てはジャック・アタリの『ノイズ』なのだが、関連した本と関連していない本を合わせて5冊借りた。あんな本やこんな本。読むべき本がたくさんある。

夕方、萱町商店街の輪越夜市に行った。まず阿沼美(あぬみ)神社に参拝して茅の輪をくぐり、それから酒屋で缶ビールを買って飲み、露天で鶏の唐揚げを買った。唐揚げは半量を明日の弁当に入れることにして、半量を丼飯の上に乗せ、葱とマヨネーズをかけて夕食にした。

天気のことを気にしていつもの温泉に行かなかったが、午前中に行ってしまえばよかったな。きょうは一日だらだら過ごした。いやあよく怠けた。

高田珠樹『現代思想の冒険者たち08ハイデガー』(講談社)を、少し日数はかかったが読了。この本では、『存在と時間』以前の時期の講義などにハイデガーの「後期思想」と呼ばれているものの大枠がすでに含まれているという知見を得たのと、神学を学んで聖職者になる道を諦めたハイデガーが短期間とはいえ理学部に進んで数学を学ぼうとしていたことを知ったのが有益だった。そして、難しい本でも、少し日数をかければ読めるのだから、少し日数をかけて読むべきだと思った。

夏のボーナスを頂いたので、遅れていた固定資産税を収め、ピアノ教室に月謝を収め、住宅ローンの口座に資金を移動し、妻子に仕送りする。毎度のことながらボーナスの行き先はあらかた決まっているのだ。まあ、無事にものごとが回っていけば、ひとまずそれでよい。ありがたいことだ。

思い立って、DebianノートPCにLMMSをインストールした。サウンドフォントとして野田工房のサイトからリンクされていた SGM-V2.01 と、MuseScoreのサイトで紹介されている Sonatina Symphonic Orchestra というのを入れてみた。これからマニュアルを読みながらちょっとずつ使ってみる。ずっと中断していたDTMが再開できそうなのは嬉しい。いやしかし、すっかり感覚が鈍っているなあ。

午前中は雨。電車で大学へ。数理論理学の講義。自由変数と束縛変数の話。代入の話など、ていねいにやる。雨のせいか講義の出席者が普段より少ない。夕方には雨が止んだので、歩いて県立図書館へ行く。外はとても蒸し暑い。借りた本を返し、新たに本を借りずに図書館を出て、フジグラン松山のマクドナルドでダブルチーズバーガーを食べてから帰宅。今シーズン初めて家のエアコンを起動。

洗濯をしてから大学へ向かう。午前中は明日の講義ノートを書く。これからひと月ほど、nCoくんの都合でゼミはお休みだ。それで、午後は少し計算をして、O下さんの話してくれた内容が確認できた。これはきちんとノートに書いておかなくては。とかなんとか言っていたら、いつのまにか窓の外は激しい雨。こりゃいけない。干してきた洗濯物はパアになっていることだろう。まあ仕方がないな。夕方、雨の小止みになった隙に自転車で帰宅し、夕食のあと連載原稿を仕上げる。高校の部活の後輩、通称タナセンが、先日の演奏会の録画をネットに上げてくれたので試聴した。全体に良くも悪くも俺たちのOBバンドの音がしている。自分のサックスのソロは、なんというか、音はよく鳴っていたものの、少々調子っぱずれであった。

朝、妙な夢をたくさん見た。午後には図書室の作業。それと、昨日O下さんと議論した内容を追いかける。夜はピアノのレッスンに行き、ジュンク堂書店に行き、Garakta Cafe & Barに行った。昨年同様、8月にピアノの出番があるらしい。お盆には京都でサックスとフルートの出番が昨年までと同様にあるはずだ。それに今年は9月に数学基礎論サマースクールの講師も引き受ける。この夏もいろいろ楽しいことがある。先日も書いたが、面白いことには積極的に首を突っ込んでいくべきなのだ。何もせず黙って座っている人のところに、楽しいことがわざわざ訪ねてきてくれる、なんてことは滅多にない。というわけで、下手を承知でまた人前でピアノを弾くことにする。

今日の講義ノートができていなかったので朝のうちに三番町ガーデンプレイスカフェで仕上げる。講義をし、そのあと、小テストの採点、O下さんとの数学のディスカッション、学生さんの質問への対応、昨日の講習の試験の採点と点数の報告、来月の出張についての打ち合わせと宿の手配、などなど、思いのほかノンストップだった。休肝日。夜中に目が覚めたので昼間ディスカッションした数学の要点をコピーの裏紙に途中まで再現する。

早朝5時半ごろ松山の家に戻る。買ってきたサンドイッチを食い、シャワーを浴びてひと息入れる。それから教員免許状更新講習のため大学へ行く。俺の担当は午前中。75分の講義を2コマと、30分の試験。受講者の先生たちはこれを2セット、合計6時間の講習を受けなければならない。そうでなくても忙しい中学・高校の先生たちを休日までこんなことに狩り出すなんて、誰が何を思って作った制度か知らないが、気の毒で仕方がない。まあしかし、請けた仕事だから真面目に講義する。ただし、時間配分が難しくて、予定したよりもずっと少なくしか喋れなかった。

明日は松山に戻って朝から教員免許状更新講習の講師をせねばならん。それがために、今日の演奏会のウチアゲにも出ずに夜行バスで帰らにゃならんのだ。まあ仕事だから仕方ない。今日の午前のうちに講習内容を確認する。それが一段落したので、近所の散歩に出る。ブックオフに寄ってみると、なかなか侮れない品揃えになっている。が、何も買わない。実家に戻ると綾部の弟がバイクで訪ねてきていた。なんでも、実家の風呂の排水口のフタが壊れているとかで、修理のための採寸に来たとのこと。そういうことを何も手伝えなくて申しわけない。俺がそう言うと、弟は「三人兄弟やから、チカラとチエとカネと、どれか出してくれたらええねんで」と言う。わははははは。どれもないわ。ただ、工作に必要な計算を弟がするのを手伝ったから、そういう意味で少しチエは出したかもしれない。

午後は夕方のOB会演奏会に向けて会場設営とリハーサル。会場の 右京ふれあい文化会館 は実家から至近で、実際近所のスーパーに行く時に毎回前を通るところ。大ホールを使わず、創造活動室という名の小ホールを借りる。小さいけれどなかなかいいホールだ。開演してみると、100席足らずの客席は満員で立ち見も出た。ありがたいことだ。ステージと客席の境目がないフラットな配置もあって、終始アットホームないいムードで演奏できて大変よかった。まあ、演奏自体はけっこう雑なところも多かったけどね。サックスパートの俺以外の3人は美女ぞろいで、それも嬉しかった。それに部活の同期の人たちが演奏会に沢山来てくれたこともあり、ウチアゲに行きたかったのだが、先述の理由で、こればっかりは仕方がない。観念して、楽器2台をかかえて電車で大阪へ移動。バスの時刻を待つあいだ 梅田のビアブルグ で一人飲み。

朝6時。新大阪で高速バスを降りた。荷物が多いので混雑する快速を避けて、鈍行で京都に向かう。京都の実家に着いてようやく朝の7時半である。着いてみて思うに、なにも今日はお休みにする必要がなかったかもしれない。明日の朝の到着で全然問題ないのだ。まあ、それを今さら言っても仕方はないからもう徹底的に休む。午前中は実家でゆっくり過ごし、昼食の冷やし中華を作って母と二人で食い、午後は一人で少し外出。明日の演奏会にちなんで、まず久々に母校の近くまで散歩した。そのあと、嵐電に乗って四条大宮へ出て、そこから阪急で河原町へ移動。丸善で本を一冊だけ買い、三条寺町のタリーズコーヒーでソイラテを飲みながら少し読む。帰りは地下鉄。

洗濯をしてから出かけ、三番町ガーデンプレイスカフェでコーヒーを飲んで大学へ。午前中、「数理論理学」の講義3回目。命題論理における論理的同値性。真理関数を実現する選言標準形。昨年までは命題論理に4回使っていたが、今年は「命題論理のコンパクト性」の話をしないことにして、命題論理の話はこれで一区切り。次回から述語論理に入る。

夕方は早めに店仕舞いして帰宅。明日はお休みを頂くことにして、夜行バスで帰省するのだ。簡単に夕食を済ませあと片付けをして、荷造りをする。時間があるので少しピアノの練習をする。

くもり空。午前中、とある書類の文面についてOg2さんと相談。午後はnCoくんのゼミ。キューネン本第IV章§7の反映原理の話。次回から第V章。本当を言うとこの本での形式言語や定義可能性の話は扱いが少し古いのだけど、そのあたりどうしたものか。

水曜日は定例の休肝日。夕食は先日作り置きしてあった豚キムチを利用して焼きそばにした。中華スープの素をケチったので、なんだか薄味になってしまった。

夜は街へ飲みに出ることが決まっているから、久々に歩いて大学へ行った。そしたら、靴の底が減っていてずいぶん歩きにくかった。週末には吹奏楽の本番も人前に出る業務もある。たまには靴を買い替えよう。銀天街のGET!へ行っていままでのと似た靴を買って店の前で履き替えた。それで、飲み会の席に古い靴の入った袋を持っていくことになってしまった。飲み会というのは、このたび東北大へ転出なさる10000000さんの送別会。各学部の数学教員一同の会席のあと学生主催の2次会にも行ったので、真夜中過ぎまで飲んでいた。それから歩いて帰宅。

朝、三番町ガーデンプレイスカフェで少し森田本(『理系人に役立つ科学哲学』化学同人2010年)を読み、ノートをとる。給料日なのでいつもの資金移動を済ませてから大学へ行く。午後「数理論理学」の講義2回目。真理値表について。トートロジーについて。明日が飲み会なので、昨日に引き続ききょうも休肝日。

少し寝坊して、あんまり食欲ないなあと思いながらも昨日のご飯の残りでカレーを食い、昨日行けなかったいつもの温泉へ行く。一転していい天気だ。温泉から戻って洗濯をする。昼食はそうめん。夕食は外食することにして、ザ丼のカツ丼。夕食後にタリーズコーヒーに行ってソイラテを飲みながら少し読書。帰宅後に明日以降に備えてお惣菜を作る。休肝日。明日の講義の準備のエンジンがなかなかかからなくて困ったが、夜には一応の講義ノートが書けた。真理値表とトートロジー。今年は「命題論理におけるコンパクト性」の証明には触れずに、述語論理の話へ進もうと思う。

朝から夕方まで雨。何もする気にならず一日家でぼんやりと過ごした。昼食にカレーを作ったのだが、食う前に少し寝かせようと思っているうちに自分が寝てしまって、食ったのは午後2時過ぎ。その後はどうも腹が減らず、とうとう夕食が抜きになった。このごろの酒の飲み過ぎで胃腸がくたびれているのかもしれない。飲み過ぎると結局自分が困るのだ。反省する。

夜には雨が上がり、ずいぶん肌寒くなった。夜、フジグラン松山に味噌を買いに行ったのだが、紳士服売り場でサーフボードをかかえたシロクマの柄のプリントTシャツを見かけたので、妻にプレゼントすることにした。二人の子供らにもそれぞれ似合いそうなTシャツを買い、妻に連絡して手渡した。

会議に出たり、ウェブサーバに新しいサイトを開くのを手伝ったり、来週末の講習の資料を作ったり。朝のうち曇り空だったがお昼前から雨。昨晩イレギュラーに外食した関係で、今日は弁当を作っていない。なのでお昼は生協の唐揚げ弁当。夕食は自分で適当に作った味噌味スープでラーメン。

朝、三番町ガーデンプレイスカフェで森田本の第5章を勉強してから大学へ行く。3年生向け専門科目「数理論理学」の講義初回。最初に論理学全般の課題として論証の構造を研究することをあげ、論理的に妥当でないが科学研究において重要な推論(帰納法とアブダクション)と論理的に妥当な推論(演繹法)とを紹介した。これは昨年まではしていなかった話で、論理的に妥当ということの説明をしていなかった結果、コースの最後近くの完全性定理の話をしたさいにその意義の説明に困るということがあったので、今年は少しやり方を変えたのだ。初回に《論理的に妥当な推論にはどんなのがあるか》という問を立て、最終回に完全性定理がその問に一応の答を出してくれる、という講義全体の見通しが、これでできあがる。

午後、雑誌『数学セミナー』7月号が届く。特集は「おおきな数」だ。フィッシュさん、木原さん、酒井さんといった人々が執筆陣に名前を連ねる。巻頭言「Coffee Break」は池上さん。両大戦間のポーランドでバナッハやマズールやウラムが数学を論じあったルヴフのスコッティッシュ・カフェがテーマで、関連して、「数学カフェ」「関西すうがく徒のつどい」「数理空間τοποσ(トポス)」「裏難波大學」など、近年盛んになってきた数学イベントや数学塾に言及されている。もちろん菊池誠(神戸の)の連載も俺の連載もある。そんなわけで今号は知った名前だらけである。

第4時限が済むと、2年生たちが続々と「集合と位相I」の期末テストを受けとりに来たので、対応に追われる。それが一段落したら入れ替わりにnCoくんがやってきた。が、どうやら特に用事はないらしい。研究室の蔵書の話から発展して、パウリだユングだ、ニュートリノがどうしたダークマターがどうしたとしばらく話し、香港の反政府デモのニュースをネットで読んだりしたあと、二人で三番町の《まんまみーあ》に夕食に行った。実はこの《まんまみーあ》は、朝に行った三番町ガーデンプレイスカフェと同じ場所なのだが、夕方からは一皿300円のイタリアン居酒屋というものになるのだ。nCoくんによるとM1の学生たちは月1回のペースで仲間内の飲み会を開いているらしく、安価で楽しく飲める店をいつも探しているという。ここなどはちょうどよいかもしれない。

朝、久々に紙ゴミを処分した。といっても、大まかに分類して紐で縛って町内の決まった場所に持っていくだけだ。紙ゴミを出し早めに家を出られたのはよかったが、朝食前に血圧を測るのを忘れたし、薬を飲むのを忘れて出かけてしまった(あとで飲みに戻った)。日記をみてもわかるとおり、アレを忘れたコレを忘れたと、このところどうも忘れものが多い。

三番町ガーデンプレイスカフェで珈琲を飲みながら考える。気がかりが多いと忘れものが増える。さしあたり気がかりだったことのうち、テストの採点は昨日済ませた。あと大きなものといえば、明日からの数理論理学の講義と来週末のイベント二連発だ。そういう気がかりなことに悩まされずに済む方法はただ一つで、悩むかわりに考えること。きちんと手をつけて安心できるところまで話を進めることだ。来週末のイベントのうち郷里で吹奏楽の演奏に参加するほうは、移動が大変なだけで不安はなにもない。問題は、その吹奏楽の本番の翌朝に、松山に戻ってきて業務の研修の講師をつとめにゃならんことだ。いまから一週間で準備を済ませないといけない。さしあたりノートに大まかに計画を書き出し、手持ちの材料をどう組み合わせるかを思案する。

10時に大学へ移動し、明日の講義の準備をする。いつものようにA4コピー用紙2枚に講義ノートを書き出すのだ。半分くらい書いたところで昼休み。それから大学院のゼミ。キューネン『集合論』第IV章第6節。\(H(\kappa)\) の理論。その応用として、強到達不能基数の不存在の無矛盾性の証明。

ゼミのあと、15時過ぎに講義ノートを書き終え、気分転換に大学生協の本屋へ行く。田中一之先生の近著を確認したいと思っていたのだが、まだないようだ。それでボールペンの替え芯だけ買って理学部に戻ると、入れ違いに裳華房から本が届いていた。というわけで、田中一之『数学基礎論序説—数の体系への論理的アプローチ』(裳華房2019年)を著者からご寄贈いただいた。ありがたいことだ。すぐにお礼のメールを送った。いっぽう、生協で買ったボールペンの替え芯は型番が違っていて使えない。

夜、フジグラン松山で食材を少し買い、ボールペンの替え芯を買い直した。買って来た唐揚げとキムチで簡単な夕食のあと、明日以降に備えてカボチャの煮付けを作った。

昨晩寝る前に米を洗って浸しておくのを忘れたので、そのぶん朝食が1時間遅れになった。まあ仕方ない。「集合と位相I」期末テストの採点を終えた。告知の掲示を出したが、きょうはクォーターの境目の休講日で学生がキャンパスにほとんどいないせいか、誰も取りに来なかった。

夜はピアノのレッスン。この2週間ほんとうによくサボったので冷や汗ものである。レッスン後は Garakta Cafe&Bar で少し飲んだ。常連さんたちのトークに巻き込まれて大笑い。楽しませてもらった。

朝、銀行に貯金箱を持っていって口座に入金した。そのまま空になった貯金箱をもって大学へ。森田本を読んでいると2年生たちが来て、先週の期末テストはそろそろ返してもらえるかと聞く。実はまだ採点に手をつけていなかったのだが、催促されちゃ仕方ない。重い腰を上げて6問中4問まで採点した。明日には終わるだろう。そのあと連載原稿の校正刷を確認したりして夜8時前に大学を出る。事情があって1階の数学図書室に寄ったら、貯金箱を忘れてきた。まあ空の貯金箱をネコババする奴もあるまいから、明日回収に行けばいいや。夕食には定番の、ひき肉と野菜の味噌炒め。

自宅にある本を整理しなおし、何冊かをブックオフに持っていった。それ以外は一日ダラダラと過ごした。夜にひよこ豆を炊いた。

午前中はいつもの温泉に行った。午後は月に一度のお約束で、井手神社にいっておみくじを引き、そのあとは、河原でサックスの練習を少しした。夕方、晩飯の食材を買いにフジグラン松山に行ったら精算機のところにエフカを忘れて帰ったらしく、店から電話があった。ごめんなさい。このごろこういううっかりミスが多い。

夜、部屋の敷物を夏物に取り替えた。

昨日あたりから考えていることを未整理なままだらだら書く。今年度の「集合と位相I」の58名の受講者のうち女子は11名だった。50名ほどいる2年生のうち10名が女子で、例年よりかなり多いのだが、しかし本来は半々である男女比が4対1になって「女子が多いね」と言うのも不自然な話だ。まあ理系に進む女子が少ないのは、うちの学科に限った話ではなくて、だから中学・高校の女の子に「理系に進もう」と呼び掛けるイベントなどなどが、このごろは数々企画される。そうやって入学者を増やすのも必要だろうけど、次は女子が安心して学べるキャンパスにする必要がある。本当を言えば女性の社会進出というのはそんなふうに入口を広げればいいというものではなくて、その入口から入って進んだ道に希望があるかどうかが問題だ。たとえば就職しても昇進できないとか給料が安いとか歩きにくい靴を強要されるとかセクハラされるとか、そういう現状を放置して門戸だけ広げてさあ社会に出ろがんばれ活躍しろ、というのは無責任だ。次は女性が安心して働ける社会にする必要がある。大学の場合と一緒だ。そして本当に女性に開かれた社会になったときには、会社の役員でも政府の高官でも、およそどんなところでも、男女の比率が半々になっていないとおかしいわけで、うちのクラスのように女子が5人に1人のところを「女子が多いなあ」などと言っているようではいけない。もちろんそうなったら家事や子育てへの男性の関与も相応に大きくならないといけない。しかし現状は厳しいというか、男性社員が育休とったら左遷されたというニュースが先日流れていた。世の中ではまだまだ「そんなもの」なんだろう。道は遠いなあ。家のことに時間を割きたい男だっていっぱいいるはずだが「世の中の掟」が許さないというわけだ。俺はさまざまな男女格差の問題はかなりの程度《労働問題》だと思っている。これ以上女にがんばらせるんじゃなくて、男ががんばるのをやめるのが正しいと思っている。がんばって維持している「普通」や「まとも」のほうが変わるべきな気がしている。もっと世の中がゆるくなるべきだと思っている。

ところで学生たちの数学のできる・できないにことさらに男女差があるようにも思えない。演習でいろいろな学生の様子を見た印象では性差より個人差のほうが大きい。特別よくできるごく少数の学生はたしかに男子だが、40人中の男子のうちほんの2〜3人であるから、10人の女子のうちにそうした例がなくても不思議ではない。当たりの確率が5分の1のクジを3回引いて1度も当たりが出ない確率はほぼ0.5で、決して珍しいことではない。上位12人まで男子が独占する確率は無作為なら0.046で、そうなったら初めてこりゃ統計的に有意かな、となる。

朝のうち、久々に本格的な雨。雷も鳴って梅雨入りを知らせにきた。きょうは電車で大学に行き、夜は歩いて帰った。

昨日と同様、午後はずっと大学で森田本を読む。第5章。科学的実在論と反実在論の検討。このあたりから、俺にとっては例の Dapprich/Schuster の量子力学の哲学の本の予習という意味あいが強くなってくる。それにこの森田邦久の本でも、先のほうに量子力学の哲学を論じた章がある。いろいろ思うところもあって、早いとこ森田本を仕上げて Dapprich/Schuster にとりかかりたいところだけれど、急いては事を仕損じるというし、慌てる乞食はもらいが少ないともいうし、慎重に行こう。

朝、県立図書館に行く。科学論関係の本をひと山借り出す。堀之内公園には涼しい風と太陽の光があふれている。Kindleアプリの起動画面みたいに木陰で読書をすると、とても気持ちいい。(ところで、いつも思うのだが、あのアイコンの人、読書を終えて立ち上がったときにきっと頭上の太い木の枝で頭を打つに違いない。)緑地では、ピクニックをする人たち、体操をする人たち、走りまわる幼稚園児たち。なんとも平和な風景である。

午後は大学で森田本を読んで過ごす。第4章まで読んだ。この本はわかりやすくていいが、科学的な命題の例として出てきた「5月14日の日の出は7時15分だった」という文は、ちょっと不思議に思った。日本時間ならば5月の日の出は6時よりだいぶ前のはずだ。世界時間(日本時間マイナス9時間)ということもありそうにない。これはどこか南半球の、しかもかなり南緯の高いところの話のはずだが、日本に住む日本人が日本語で書く文に南半球の日の出の話が何の説明もなく出てくるのも不思議な話である。まあ、科学的な命題が正しい命題でなくてはならんというわけではないのだけれども。

さて、ダジャレ好きな俺は、夏日なのでナスビを晩飯に食うことにした。豚肉と茄子と葱とぶなしめじを炒めて味噌味をつけてビールの肴にする。

くたびれ気味であんまり進捗がない。午後、大学院のゼミ。定義された演算の相対化について基本にかえって確認する。夜、赤っぽい色の星がひとつ北の空を西から東へ移動するのが見えた。聞くところによると、あれは国際宇宙ステーションだそうだ。

水曜日は定例の休肝日。夕食は小松菜と豚肉とぶなしめじの炒めもの。

午前中「集合と位相I」の期末テスト。クォーター制の授業なのでこの時期が「期末」なのだ。問題は思いのほか易しかったようだ。午後は研究室に何人かの来訪者があったので応対。合間に森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人2010年)を開き、ノートをとりつつ読む。先日ちょっと言及した Dapprich/Schuster の量子力学の哲学の本を読むために、まあ泥縄で勉強するわけだ。あと、若い友人で医師で哲学徒の のうこ とチャットで連絡をとり、最近書いたものを読ませてもらう。俺とのうこは物事への関心の持ち方がまるで違うようでいて、究極的な目標というか志には共通のものがある。そのことが改めて確認できてよかった。

夜は外食。「集合と位相I」の演習を共同で担当した大下さんと、TAを務めてくれたnCoくん、1098くんを誘って一番町のスリーバーチュで唐揚げを食いビールを飲みつつ談笑。仕事帰りの卒業生「増長天さま」が飛び入り参加してくれたのが嬉しかった。

午前中は家にいて洗濯と本読みをしつつ疲労回復をはかる。午後は大学で学生の質問に答える。位相数学の《ストーン・チェックコンパクト化》の構成の解説はできたのに、複素解析の三角関数の定積分の問題 \[ \int_0^{2\pi}(\sin \theta)^{2n}\,d\theta=\text{?} \] に答えられなかったのが、なんとも悔しかった。

夕食後にお惣菜を作る。休肝日。

昨日と同じ三宮のなか卯で朝食後、京都へ移動。新大阪まで乗れる周遊券を最大限活用すべく、JRで大阪駅まで行き、阪急に乗り換える。西院で電車を降り、バスで北野白梅町へ。北野の京都こども文化会館で高校の吹奏楽部のOBバンドが練習をするので、それに顔を出すのだ。

バスを降りようというところで楽器ケースの肩紐をひっかけるD環が取れるというトラブル。D環が撓んだだけで、折れたりケースが破損したりはしていないので、修繕は容易と思われるが、道具がなくてはどうしようもない。急遽、白梅町のイズミヤでペンチとハンマーを購入した。天一で早めの昼食のあと、北野天満宮の大鳥居の下で、石を下敷にハンマーでD環を叩いて応急処置。ケースを肩にかけても大丈夫になったところで、安心して天神さまにお参りし、境内で一休みする。

さて吹奏楽の練習。もう本番の3週間前だが、練習でのメンバーの集まりは決してよくないようだ。もちろん、今回しか練習に顔を出せない俺も、人のことは言えない。大人になってしまうと、高校生のように毎日練習というわけにはいかない。できる時に一生懸命やるだけだ。というわけで、昼の1時から夕方5時前まで練習。久しぶりにテナーで合奏に参加した。やっぱり、合奏は楽しいぞ。ただし、俺自身にも楽団全体にも、課題は山ほどある。22日の本番まで、松山で練習する時間をとらなくてはならない。

練習が終わったら古い仲間と旧交を温める暇もなく帰路につく。北野天満宮前からバスで円町まで行ってJRに乗り、京都駅で新幹線を待つのだ。18時24分ののぞみに乗って出発して、特急しおかぜが松山に着いたのは22時37分。さすがに少々くたびれた。

ともあれ、面白いことには積極的に首を突っ込んでいくべきだと改めて学んだ2泊3日の旅であった。

朝、三宮のなか卯で朝食をとったあと六甲へ移動。JR六甲道駅近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら J.P.Dapprich/A.Schuster “Philosophy and Logic of Quantum Physics” (Peter Lang Edition, 2016) という本を開く。哲学の洋書というのはあまり経験がないのでなかなか読み進められないが、序文によれば、ちょっと興味深げな内容なので、あきらめずに読もうと思っている。

11時前にサイゼリヤに移動。ヨリオカくんイケガミくんに会う。今年9月のサマースクールの関係者が集まって、打ち合わせと配布資料の編集をするのが、今回の出張の目的なのだ。あとから菊池誠(神戸の)が合流し、昼食を食いながらサマースクールのウェブサイトやチラシのデザインの話などをしてから、バスで神戸大学へ移動。さらにサカイさんを加えて、夕方までセミナー室で配布資料についてさまざまに意見交換。並行して書いている本の証明の問題点についての指摘やなんかもイケガミくんからもらう。

夕方、大学でサカイさんと別れ、阪急六甲でイケガミくんと別れて、ヨリオカくん、菊池誠(神戸の)と3人でバル「デリランテ」でワインを飲みつつ夕食。いつものように菊池さんの毒入り数理哲学放談に俺が無責任に合いの手を入れる。こういう話になると、ヨリオカくんは、一定の理解と関心を示しつつも、決して俺のように安易なことは言わず、よい意味の物わかりの悪さを発揮してくれるので大変ありがたい。

菊池さんは「このごろフジタさんは目つきが変ってきた。自分のやりたいことを見つめ始め、自分の世界を作り始めたように見える。自分自身と世間との遊離についての関心がなくなってきたように見える。」と意外なことを言いだした。まあ《普通の数学者》としての仕事をせにゃならんというプレッシャーを感じることが減ってきたのは確かだが、以前にも増してグダグダと毎日を過ごしているだけで、自分の世界を作るような活動なんか何もしている自覚がないのだ。俺がそう言うと菊池さんは「数学をせにゃならんと思わなくなったのはいいことで、かえってこの先に数学で仕事する気がする」と、またまたアリエナイ予言をする。あまり気にしないことにしよう。