第I章 演習問題 [11]

→の証明: まず集合 \(A\) の整列順序づけ \(\triangleleft\) を任意に固定する. 有限性の集合族 \(\mathcal{F}\) のメンバー \(X\) が任意に与えられたとする. 順序数 \(\alpha\) に対する \(X_\alpha\) を以下のように再帰的に定める: まず \(X_0=X\) とする. \(X_\xi\) が定まったとしたら, \(A\setminus X_\xi\) の要素 \(a\) で \(X_\xi\cup\{a\}\in\mathcal{F}\) となるものがないか調べる. もしあれば, その \(\triangleleft\)-最小要素 \(a^*\) をとって \(X_{\xi+1}=X_\xi\cup\{a^*\}\) と定める. もしもそのような要素 \(a\) が一つもなければ, \(X_{\xi+1}=X_\xi\) とする. 極限順序数 \(\alpha\) については, それまでに定まった \(X_\xi\) の和をとって \(X_\alpha=\bigcup_{\xi<\alpha}X_\xi\) とする. すると, \(|\mathcal{P}|^+\) 未満のある順序数 \(\lambda\) について \[ X_\lambda=X_{\lambda+1}=\cdots=\bigcup_{\alpha\in\mathbf{ON}}X_\alpha \] となる. この第1の等号は, \(X_\lambda\) に \(A\) のどの要素をつけ加えても もはや \(\mathcal{F}\) のメンバーではなくなることを意味している. いっぽう, 各段階で \(X_\alpha\in\mathcal{F}\) であることは, \(\alpha\) にかんする超限帰納法で検証できる. 後続型順序数の段階では定義から明らかだし, 極限順序数の段階では, \(\mathcal{F}\) が有限性の集合族であることと, \(X_\alpha\) の任意の有限集合が \(\alpha\) 未満のある段階の \(X_\xi\) に含まれることを用いればよい. こうして, \(X_\lambda\) は求められた条件 \[ X_\lambda\in\mathcal{F}\land X\subset X_\lambda \land \forall Z\in\mathcal{F}\big(\,X_\lambda\subset Z\rightarrow X_\lambda=Z\,\big) \] をみたす.

←の証明: \(\mathcal{S}\) は集合の集合で, \(0\notin\mathcal{S}\) だとする. \(A=\bigcup\{\,\{x\}\times x\,:\,x\in\mathcal{S}\,\}\), つまり, \(\mathcal{S}\) のメンバー \(x\) とその要素 \(y\) の対 \(\langle x,y\rangle\) の全体を \(A\) とする. \(A\) の部分集合の族 \(\mathcal{F} \) を, \[ \mathcal{F}=\Big\{\,X\subset A\,:\,\forall x\forall y\forall x'\forall y'\big(\; \langle x,y\rangle\in X\land \langle x',y'\rangle\in X\land x=x' \rightarrow y=y' \;\big)\,\Big\}\tag{1} \] つまりペアの集合としての関数になっている部分集合の全体とする. \(\mathcal{F}\) は有限性の集合族である. そこでタッキーの補題により, \(\mathcal{F}\) のメンバー \(Y\) で \[ Y\in\mathcal{F}\land \forall Z\in\mathcal{F}(\, Y\subset Z\rightarrow Y=Z\,) \]をみたすものが存在する. \(Y\) は \(\mathcal{F}\) のメンバーであるから, \(\mathcal{S}\) のある部分集合 \(\mathcal{D}\) からの選択関数になっている. \(\mathcal{S}\setminus\mathcal{D}\) に要素 \(x\) があれば, その任意の要素 \(y\in x\) とのペアを \(Y\) に添加して \(Y\cup\{\langle x,y\rangle\}\in\mathcal{F}\) となるはずだが, これは(1)に矛盾する. したがって \(Y\) は \(\mathcal{S}\) 全体で定義された選択関数になっている. こうしてタッキーの補題はこの章の演習問題[10]の(b)の命題を導く.

ここでは → を表面上はヒントとは異なる道筋で証明していますが, 根本にある発想は同じです. これについては[10]の解答も見てください.

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年5月29日)

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