第II章 演習問題 [41]

【補題 1】 \(T\) を \(\omega_{1}\)-アロンシャイン木、\(W\) を \(T\) の有限部分集合の不可算族で、どの2要素も互いに交わらないものとする。このとき、\(S,S' \in W\) で \(\forall x \in S \forall y \in S' ( x\) と \(y\) は比較不能\()\) となるものがある。

〔証明〕\(W_{1} \subset W\) と \(n \in \omega\) を \(|W_{1}|=\omega_{1}\), \(\forall S \in W_{1}(|S|=n)\) を満たすように選ぶ.また,\(S \in W_{1}\) となる \(S\) の \(n\) 個の要素には \(1\) から \(n\) までの番号を振り,\(S\) の \(k\) 番目の要素を \(z^{S}_{k}\) で表す.\(\mathcal{F}\) を \(W_{1}\) 上の超フィルターで \(\forall X\in \mathcal{F}(|X|=\omega_{1})\) を満たすものとする.

示すべき補題が偽であると仮定する.\(x \in T\) と \(k \in \{ 1, \ldots , n \}\) に対して,\(Y_{x,k}=\{\,S \in W_{1}\,|\,x\) と \(z^{S}_{k}\) は比較可能\(\,\}\) とおく.仮定により,任意の \(S,S' \in W_{1} (\subset W)\) について,\(\exists t \in S \exists t' \in S'(t\) と \(t'\) は比較可能 \()\) となるので,任意の \(S \in W_{1}\) について,\(\displaystyle \bigcup_{x \in S} \bigcup_{k=1}^n Y_{x,k}=W_{1}\) が成り立つ.\(S \in W_{1}\) に対し,\(Y_{x_{S},k_{S}} \in \mathcal{F}\) となるように \(x_{S} \in S\) と \(k_{S} \in \{ 1, \ldots , n \}\) をとる.今,\(\{\,S \in W_{1}\,|\,k_{S} = k \,\}\) が不可算となる \(k \in \{ 1, \ldots , n \}\) が存在するので,その \(k\) を取り,\(Z=\{\,S \in W_{1}\,|\,k_{S} = k\,\}\) とおく. \(S \in Z\) に対応して取られた \(x_{S}\) が互いに比較可能であることを示す.これが示されれば,\(W_{1}\) が互いに交わりを持たない集合族であることから,各 \(x_{S}\) は全て異なるので,\(\{\,x_{S}\,|\, S \in Z\,\}\) は \(T\) の不可算鎖となり,\(T\) がアロンシャイン木であることに反するので,補題が真であったと結論される.

\(S_{1},S_{2} \in Z\) とそれに対応する \(x=x_{S_{1}}\), \(y=x_{S_{2}}\) をとる.このとき,\(x\neq y\) である.\(Y=Y_{x,k}\cap Y_{y,k}\) は超フィルター \(\mathcal{F}\) の元であり,不可算集合である.任意の \(S \in Y\) について,\(z^{S}_{k}\) は \(T\) の元であって,かつ,\(x,y\) それぞれと比較可能である.\(Y\) は不可算だから,\(S \in Y\)で,「\(x\leq z^{S}_{k}\) または \(y\leq z^{S}_{k}\)」を満たすものがある.(\(T\)は高さ\(\omega_1\)だから \(z\leq x\) かつ\(z \leq y\) をみたす \(z\) は可算個しかない)〔証明終〕

\(T\) を \(\omega_{1}\)-アロンシャイン木とする. 半順序 \(\langle \mathbb{P},\leq \rangle\)を次のとおり定義する. \[ \begin{gather} p \in \mathbb{P} \iff \text{\(p\) は \(T\) から \(\omega\) への有限部分関数} \land \forall x,y \in \textrm{dom}(p) \Big(\text{\(x\) と \(y\) が比較可能} \rightarrow p(x)\neq p(y) \Big)\\ p \leq q \iff q \subset p \end{gather} \]

【補題 2】 \(\langle \mathbb{P},\leq \rangle\) はc.c.c.を満たす.

〔証明〕\(X \subset \mathbb{P}, |X|\geq \omega_{1}\) とする.この中から両立する2元がとれることを示す.まず, \(\{\,\textrm{dom}(p)\,|\, p \in X\,\}\) は不可算である.\(\Delta\)-システム補題を \(\{\,\textrm{dom}(p)\,|\,p \in X\,\}\) に適用し,\(X_{1}\) と \(S\) を,\(X_{1} \subset X \land |X_{1}| \geq \omega_{1} \land|S|< \omega \land \forall p,q \in X_{1}(p \neq q \rightarrow \textrm{dom}(p) \cap \textrm{dom}(q) = S)\) を満たすように取る.さらに,\(X_{2} \subset X_{1}\) を,\(|X_{2}| \geq \omega_{1} \land \forall p,q \in X_{2}(p \upharpoonright S = q \upharpoonright S)\) を満たすように取る.補題1を \(\{\,\textrm{dom}(p)\setminus S\,|\,p\in X_{2}\,\}\) に適用して,\(p,q\in X_{2}\) で \(\forall x \in \textrm{dom}(p) \setminus S\forall y \in \textrm{dom}(q) \setminus S\;(\,x\) と \(y\) は比較不能\(\,)\) となるものを取る.このとき \(p \cup q\) は \(\mathbb{P}\) の要素であり,\(p,q\) の共通拡大である.〔証明終〕

\(x \in T\) に対して,\(D_{x}=\{\,p \in \mathbb{P}\,|\,x \in \textrm{dom}(p)\,\}\) とおく.これは \(\mathbb{P}\) の中で稠密な集合である.(\(p \in \mathbb{P} \setminus D_x\)に対して,\(n\) を \(\omega\setminus \textrm{ran}(p)\) の要素として \(q = p \cup \{\langle x,n \rangle \}\) とおくと,\(q \leq p\) かつ \(q \in D_x\) である.) \(\mathbf{D}=\{\,D_{x}\,|\, x \in T\,\}\) とおくと,\(|\mathbf{D}|=|T|=\omega_{1}\) である.ここで \(\mathrm{MA}(\omega_{1})\) を \(\mathbb{P}\) と \(\mathbf{D}\) に適用して,\(\mathbf{D}\) に属するすべての稠密集合と交わる \(\mathbb{P}\) のフィルター \(G\) を得る.ここで,\(f=\bigcup G\) と定めると,\(f\) は \(T\) から \(\omega\) への関数である.そして,\(f\) は「 \(x,y \in T\) が比較可能 \(\Rightarrow f(x)\neq f(y)\) 」を満たす( \(x,y\) が比較可能であるとする.\(p,q \in G\) を,\(x \in \textrm{dom}(p),y \in \textrm{dom}(q)\) をみたすようにとる.このとき,\(p\)と\(q\)の共通拡大\(r \in G\)をとると,\(r(x) \neq r(y)\) であり,\(r \subset f\) なので,\(f(x) \neq f(y)\) ).各 \(n \in \omega\) に対し,\(f^{-1}(\{n\})\) は\(T\)の反鎖をなすので \(T\)は特殊アロンシャイン木である.

 

解答者: 田尻 翔平さん (公開日: 2011年12月22日)

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