第IV章 演習問題 [11]

大筋では, 定理5.4の証明を踏襲する.

第III章定義5.9は \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}\) で意味をもち, 同章の補題5.10も \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}\) で証明されたことを思い出そう. 関係 \(R\) が集合 \(A\) 上で整礎的であれば, 推移的集合 \(T\) の上へのモストフスキ収縮写像 \(G:A\to T\) が一意的に定まり, \(a\mathbin{R}b\,\rightarrow\,G(a)\in G(b)\) となるのだった. 逆に, 写像 \(G:A\to T\) の値域 \(T\) が \(\mathbf{WF}\) に属し, すべての \(a,b\in A\) が \(a\mathbin{R}b\,\rightarrow\,G(a)\in G(b)\) をみたすならば, \(R\) は \(A\) 上で整礎的である. なぜなら, 部分集合 \(S\subset A\) から \(G\) の値の階数が最小になるものを選べばそれが \(S\) の \(R\)-極小要素になるからである. \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}\) では, \(T\) が \(\mathbf{WF}\) に属するという条件が絶対的ではない憂いがあったが, いまは \(\mathrm{ZF}-\mathrm{P}\) で考えているので, すべての集合はもとより整礎的で, \(T\in\mathbf{WF}\) という条件は考慮するまでもない. したがって, 関係 \(R\) が集合 \(A\) 上で整礎的であるためには, \[ \exists T\exists G\Big[\; G:A\to T\land \forall a,b\in A\big(\,a\mathbin{R}b\,\rightarrow\,G(a)\in G(b)\,\big) \;\Big] \] となることが必要かつ十分である. この \([~]\) 内の条件は \(A\), \(R\), \(T\), \(G\) を要素にもつ任意の推移的クラスに対して絶対的である.

さて, \(\mathbf{M}\) が \(\mathrm{ZF}^{-}-\mathrm{P}\) の推移的モデルであったとする. そして, \(R\) を \(\mathbf{M}\) に属する関係, \(A\) を \(\mathbf{M}\) に属する集合とする.

いま, (関係 \(R\) が集合 \(A\) 上で整礎的である)\(^{\mathbf{M}}\)とすれば, \(\mathbf{M}\) 内で存在が示されたモストフスキ収縮写像 \(G:A\to T\) を真の宇宙 \(\mathbf{V}\) で吟味することにより, (真に) 関係 \(R\) が集合 \(A\) 上で整礎的であることがわかる.

逆に, 本当に(つまり \(\mathbf{V}\) において) 関係 \(R\) が集合 \(A\) 上で整礎的だったとすると, \[ \forall S\subset A\Big[\;S\neq0\,\rightarrow\,\exists a\in S\forall s\in S(\neg s\mathbin{R}a)\;\Big] \]となる. この \([~]\) 内の条件は有界な量化だけで書けるから \(\mathbf{M}\) に対して絶対的である. この式が(\(\mathbf{V}\) において)真であるからには, 考慮すべき部分集合 \(S\) の捜索範囲が \(\mathbf{M}\) に制限された \[ \Big(\forall S\subset A\big[\;S\neq0\,\rightarrow\,\exists a\in S\forall s\in S(\neg s\mathbin{R}a)\;\big]\Big)^{\mathbf{M}} \]もまた真である. つまり, (関係 \(R\) は集合 \(A\) 上で整礎的である.)\(^{\mathbf{M}}\)

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年6月16日)

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