第V章 演習問題 [7]

問題中の 《\(\,\mathrm{ZFC}\) のすべての公理》 というのは, 《\(\,\mathrm{ZF}\) のすべての公理》 の間違いでした. これまた訳者のミスです. すみません.

演習問題[6]の結果から, 推移的な真のクラス \(\mathbf{M}\) が \(\mathrm{ZF}\) のうち累積階層 \(\langle\,R(\alpha)\,:\,\alpha\in\mathbf{ON}\,\rangle\) を定義してその基本的な性質を証明し \(\mathbf{V}=\mathbf{WF}\) を確立するのに十分なだけの有限個の公理をみたすならば, \[ \forall x\subset\mathbf{M}\exists y\in\mathbf{M}(x\subset y)\tag{A} \] が成立する. また, 推移的な真のクラス \(\mathbf{M}\) が内包性公理のモデルで, さらに(A)が成立するならば, \(\mathbf{M}\) は \(\mathrm{ZF}\) のモデルになる.

そこで, \(\mathbf{M}\) について条件(A)が成立することを保証するのに十分なだけの \(\mathrm{ZF}\) の有限個の公理がすでに集められたとして, さらに \(\mathbf{M}\) が内包性の公理のモデルとなることを保証するにはどうするか考える. 集合 \(a\in \mathbf{M}\) と式 \(\varphi(x)\) が与えられたとしよう. 集合 \(b=\{\,x\in a\,:\,\varphi^{\mathbf{M}}(x)\,\}\) が \(\mathbf{M}\) に属することを示したい. \(\langle\,R(\alpha)\cap\mathbf{M}\,:\,\alpha\in\mathrm{ON}\,\rangle\) と \(\mathbf{M}\) の組は第IV章定理7.5の条件をみたすので, 順序数 \(\alpha\) を \[ a\in R(\alpha)\cap\mathbf{M}\land\forall x\in a\big(\, \varphi^{\mathbf{M}}(x)\,\leftrightarrow\,\varphi^{R(\alpha)\cap\mathbf{M}}(x) \,\big) \]となるようにとれる. したがって, このとき \(b=\{\,x\in a\,:\,\varphi^{R(\alpha)\cap \mathbf{M}}(x)\,\}\) である. ある自然数 \(m\) について \[ \mathrm{En}(m,R(\alpha)\cap \mathbf{M},2)=\big\{\,\langle x,y\rangle\in(R(\alpha)\cap \mathbf{M})^2\,:\,x\in y\land \varphi^{R(\alpha)\cap \mathbf{M}}(x)\,\} \] となっているはずなので, \[ b = \Big\{\,x\,:\,\exists s\in \mathrm{En}(m,R(\alpha)\cap \mathbf{M},2)\big(\,s(0)=x\land s(1)=a\,\big)\,\Big\} \] となる. そこで, \(\mathbf{M}\) が \(\mathrm{En}\) 関数を定義しその基本的な性質を確立するのに十分なだけの \(\mathrm{ZF}\) の有限個の公理の推移的モデルであり, さらに \[ \forall X\in \mathbf{M}\forall a\in\mathbf{M}\,\Big(\, \big\{\,s(0)\,:\,s\in X\land s(1)=a\,\big\}\in\mathbf{M} \,\Big) \] をみたすならば, \(\mathbf{M}\) は内包性公理のモデルになることがわかる.

さて, 集合 \(X\) と \(a\) から \(\big\{\,s(0)\,:\,s\in X\land s(1)=a\,\big\}\) を作る演算はある \(\mathrm{ZF}\) の有限部分のすべての推移的モデルに対して絶対的であるから, 結局, 累積階層を定義し \(\mathbf{V}=\mathbf{WF}\) を確立できて, \(\mathrm{En}\) 関数を定義してその基本性質を確立し, そのうえ \(X\) と \(a\) から \(\big\{\,s(0)\,:\,s\in X\land s(1)=a\,\big\}\) を作るのに十分なだけの \(\mathrm{ZF}\) の有限個の公理を集めて, それらの連言を \(\phi\) とすれば, \(\phi\) のモデルとなるような推移的な真のクラスは \(\mathrm{ZF}\) のモデルとなることがわかる. これが証明すべきことであった.

 

解答者: 藤田 博司 (公開日: 2011年7月16日)

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