第VII章 演習問題 [F2]

まず, 本題の前半, 後半共通に必要な補題を証明する.

(補題1) : \(G\) を \(M\) 上 \(\mathbb{P}\)-ジェネリックフィルターとする. ある \(p \in \mathbb{P}\) がアトムであって, \(p \in G\) であるとき, \(G = \{ q \in \mathbb{P} : q\) と \(p\) は両立する\(\}\) であり, \(G \in M\) である.

(証明) : \(\{ q \in \mathbb{P} : q \) と \(p\) は両立する\(\} \subset G\) を示せばその他のことは明らかである.

\(q\) を \(p\) と両立する任意の元とする. このとき, \(D_{pq}=\{ r \in \mathbb{P} : (r \leq p\) かつ \(r \leq q)\) または \(r \bot p\) または \(r \bot q \}\) は \(M\) に属する \(\mathbb{P}\) の稠密部分集合である(この事実については[D8]解答内参照). \(r \in G \cap D_{pq}\) をとる. \(r\) と \(p\) が両立し, \(q\) と \(p\) が両立し, \(p\) がアトムであることから, \(r\) と \(q\) は両立する. \(r \in D_{pq}\) であるので, \(r \leq p\) かつ \(r \leq q\) である. \(r \in G\) から, \(q \in G\) である. よって, \(\{ q \in \mathbb{P} : q\) と \(p\) は両立する\(\} \subset G\) である.


本題の前半を証明する.

(前半) : \(\mathbb{P} \in M \), \(\mathrm{c.c.}(\mathbb{P}) = n < \omega\) とする. 濃度 \(n-1\) の反鎖が存在するので, それを一つとり \(A\) とする. \(M\) 上 \(\mathbb{P}\)-ジェネリックフィルター \(G\) を任意にとる. \(A\) が極大反鎖なので \(|A \cap G|=1\) である. そこで, \(\{ p \} = A \cap G\) とおく. \(\mathrm{c.c.}(\mathbb{P})=n\) であることから, \(p\) はアトムである. \(p\) がアトムであることから, 補題1により \(G = \{ q \in \mathbb{P} : q \) と \(p\) は両立する\(\} \in M\) である.


本題の後半に必要な補題を証明する.

(補題2) : \(\mathbb{P} \in M\), \((\mathbb{P}\) は \(\kappa\)-c.c.をみたす\(\wedge \mathbb{P}\) は \(\kappa\)-閉\()^M\) とする. このとき, \(D_\mathbb{P} = \{ q \in \mathbb{P} : q\) はアトムである\(\}\) とおくと, \(D_\mathbb{P} \in M\) であり, \(D_\mathbb{P}\) は \(\mathbb{P}\) の稠密部分集合である.

(証明) : \(D_\mathbb{P} \in M\) は明らか. 稠密性について議論する. \(q_0 \in \mathbb{P}\) とする. \(q_0\) がアトムなら \(q_0 \in D_\mathbb{P}\) であるのでそれでよい. そうでない場合, 各 \(\alpha < \kappa\) についての \(q_\alpha\), \(z_\alpha\) を次のように帰納的に構成する. :

\(\alpha < \kappa\) とする. \(\forall \gamma < \alpha\)(\(q_\gamma\) が既に定まっていて, かつ, \(q_\gamma\) はアトムでない) が成り立つとする. このとき,

\(\alpha\) が後続型順序数 \(\beta+1\) である場合, 帰納法の仮定により \(q_\beta\) がアトムでないので, \(\{ q \in \mathbb{P} : q < q_\beta \}\) は両立しない2元をもつので, 片方を \(z_{\beta+1}\) , もう片方を \(q_{\beta+1}\) とする.

\(\alpha\) が極限順序数である場合, それまでの構成により, 降下列 \(\langle q_\gamma : \gamma < \alpha \rangle\) が \(M\) に属していて, \(\mathbb{P}\) が \(M\) において \(\kappa\)-閉であるので, \(\forall \gamma < \alpha (s \leq q_\gamma)\) なる \(s\) をとって, それを \(q_\alpha\) とする. ここでは \(z_\alpha\) は定義する必要はない.

この構成が途中で終わらなかったとすると, \(\langle z_{\alpha+1} : \alpha < \kappa \rangle\) は濃度 \(\kappa\) の反鎖となってしまうが \(\mathbb{P}\) は \(M\) において \(\kappa\)-c.c.をもつので, それはありえない. なので, この帰納的構成は途中で終わり, ある \(\alpha < \kappa\) について \(q_\alpha\) はアトムであり, \(q_0 \geq q_\alpha \in D_\mathbb{P}\) である.


本題の後半の場合についても, 前半と同様の結果が成り立つことを証明する.

(後半) : \(\mathbb{P} \in M\), \((\mathrm{c.c.}(\mathbb{P}) = \kappa \wedge \mathbb{P}\) は \(\kappa\)-閉\()^M\)とする. \(M\) 上 \(\mathbb{P}\)-ジェネリックフィルター \(G\) を任意にとる. 補題2により \(r \in G \cap D_\mathbb{P}\) をとる. \(r\) はアトムなので, 補題1により \(G = \{ q \in \mathbb{P} : q\) と \(r\) は両立する\(\} \in M\) である.

 

解答者: 田尻 翔平さん (公開日: 2013年4月13日)

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